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社説「島伝い」

2013年2月4日

誰の常識が正しい?

アルジェリア南東部イナメナス近郊の天然ガス精製プラントで発生した人質拘束事件は、民間人の犠牲者の数が40人近くにのぼるという最悪の事態となりました。そのほとんどは外国人で、日本人10名のほか、フィリピン人、イギリス人、ノルウェー人、アメリカ人、マレーシア人、ルーマニア人、コロンビア人、フランス人が犠牲になりました。

 
日本をはじめ関係国は、事件当初から武装勢力に対する非難を表明。また、人質の命を優先し、軍事作戦には慎重な対応をアルジェリア政府に求めました。しかし、結局は関係国への通告もなく、軍事作戦という強硬策が取られました。

 
人質救出ではなく武装勢力への攻撃が行われた結果、多くの犠牲者が出たことについては、アルジェリア政府に対して厳しい非難の声が上がっています。一方で、同政府がテロリストに屈することなく軍事作戦を展開したことについて、民間人で多数犠牲者が出たことは本当に痛ましいとしながらも、一定の理解を示す意見もあります。

 
一昨年のアラブの春以降、リビアなど独裁政権が抱えていた武器の多くは、イスラム系武装勢力の手に渡っており、戦闘力が格段に上がっているとも言われています。今回の人質拘束事件に関しても、その背景にはさまざまな要因が絡んでおり、一概にどの意見が正しいとは言えません。

 
もし同様の事件が日本で発生していたら、おそらくまずは人命最優先の対応が取られるだろうという予測がつきます。しかし、文化や考え方の異なる海外では、我々の予測がつかない方向へ事態が進展することは十分あり得ます。海外に居る以上、自分達の常識が通用しない、予測がつかないリスクが常にあることを、今回の事件を受けて我々も改めて考えなければならないでしょう。そして、そのリスクがかなり小さく、外国人も安心して日常生活を送れるシンガポールは、かなり恵まれた環境であることも忘れてはなりません。

 
最後に、今回の人質拘束事件で犠牲になった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.228(2013年02月04日発行)」に掲載されたものです。

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