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社説「島伝い」

2013年5月20日

胃袋をつかめ

今号8ページの記事「外食費、シンガポール人は域内最大」によると、シンガポール人が外食に支出する額は、月平均324Sドル。シンガポール在住者の間で言われる「1Sドル=100円として考えよ」という言葉に習うと3万円以上に相当します。

 
また、シンガポール人は食べることが好き、というのはシンガポール人の多くが認めるところで、朝食、午前の軽食、昼食、午後のティータイム、夕食、夜食と1日6食は当たり前、というのはあながち冗談ではないようです。朝食は近所のコーヒーショップで食べて、夕食の一家だんらんはホーカーセンターでというのもよく見かける光景。前述のシンガポール人の外食費の月平均には、食事の回数の多さに加えて元々日常の食事を外で取る機会が多いことを考慮する必要があります。

 
調査結果を見てやはり気になるのは高級レストランの利用率の高さ。ここにも近年向上してきたシンガポール国民の経済力の高さが表れています。さらに今回の調査結果では、居酒屋やパブなど酒類の提供をメインとする店の利用も26%となっていました。従来シンガポール人はあまりお酒を飲まないとされていたことを考えると、決して低くはない数字です。

 
ここ数年、シンガポールでも日本の居酒屋スタイルの飲食店が増え、日本人以外の地元客などが日本酒や焼酎、サワーなどを片手におつまみを 楽しんでいる姿をよく目にするようになりました。90年代半ば頃には考えられなかったことです。一方、日本でも近年シンガポール料理の店が増え、チキンライスやラクサ、チリクラブなどを楽しめるようになってきました。

 
食文化は、世界各地のさまざまな文化を見てもその重要な要素であることは間違いありません。食は人間にとって基本的な欲求でもあり、日本食が広く浸透してシンガポールの人々を魅了している、すなわち「胃袋をつかんでいる」ことは、日本とシンガポールの関係にも少なからず良い影響をももたらすのではないでしょうか。1966年の国交樹立から半世紀近く、両国の関係はかなり良好ですが、食文化での交流を通じてさらに関係深化が図れるのではないかと期待しています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.234(2013年05月20日発行)」に掲載されたものです。

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