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社説「島伝い」

2016年3月21日

「世界一の都市でのやり繰り」

近年アジアだけでなく世界中からさまざまな面で高い注目を集めているシンガポールですが、ここ数年、あるランキングで世界一の座を保持しています。それは、英経済紙『エコノミスト』が年2回発表している世界各都市の生活費ランキング。3月10日に発表された最新ランキングで3年連続の1位が明らかになりました。

 

今回のランキングは、世界133都市での昨年9月の生活費を、ニューヨークを100として指数で表したものです。ちなみに2位はチューリッヒで、3位は香港。調査の基準都市であるニューヨークは7位、東京は11位でした。シンガポールはニューヨークに比べて2割近く高いとのこと。シンガポール在住者にとっては、正直なところあまり有り難くない「世界一」です。

 

日本への一時帰国では買い物を楽しみにしている人も多いでしょう。実際、日本の方がシンガポールより割安と感じることがかなり増えました。10年ほど前とは状況がすっかり逆転しています。2012年末からSドル高傾向にあることも理由の一つですが、リーマンショックの影響を受けた2009年を除いて、2008年頃からの5~6年間でシンガポール国内の物価上昇が進んだことも大きな要因です。

 
同じく近年大きく上昇しているのが、個人から見れば収入、企業から見れば人件費というコスト。昨年7月にシンガポール人材開発省(MOM)が発表したデータによると、大卒者の初任給平均は3,200Sドル。同時期の為替レートで30万円ほどになったため、日本国内の大卒新入社員の給与との開きに頭を悩ませた日系企業も多かったようです。

 

もっとも、シンガポールで活動する以上、物価高や人件費高を理由に諦めてばかりもいられません。必要な物には必要なコストをかけて事業を進めるべく、この世界一生活費の高い都市で何ができるかを考える必要があります。4月からの新年度に向けて今月は予算編成に忙しい企業も多いでしょう。思い切った策で「やり繰り上手」になる良い機会ともいえます。この状況でも事業を成長させることができれば、会社にとっても個人にとっても大きな強みになるでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.298(2016年3月21日発行)」に掲載されたものです。

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