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社説「島伝い」

2013年11月18日

チューインガムにまつわる話

先月、ごみの投げ捨てに対する罰則を強化するために、関連法案の見直しが行われていることをリー・シェンロン首相が明らかにしました。シンガポールでは、公序良俗に反するさまざまな行為について罰金が設けられています。意外なところでは、ハトへの餌やり。野良のハトに公共の場で餌をやると500Sドル以下の罰金が科せられます。

 
また、良く知られているのがチューインガムに関する罰則。ガムをシンガポールへ大量に持ち込むことや、医療目的を除いて販売することは禁止されており、違反すると2000Sドル以下の罰金が科せられます。また、噛んだガムを投げ捨てると、ごみの投げ捨てと同様に罰金が科せられます。

 
ガムの製造・輸入・販売が全面禁止されたのは1992年、ゴー・チョクトン現名誉上級相が首相だった時でした。その後、2004年にアメリカと自由貿易協定が締結された際、歯科治療用ガムや禁煙ガムなどの販売は認められるようになりました。

 
ガムに関する規制が世界的に有名になったのは1994年。友達とスプレー塗料で車18台にいたずらをしたアメリカ人高校生がむち打ち刑を言い渡され、アメリカのメディアなどで大々的に報じられて大騒動に。当時のアメリカ大統領ビル・クリントン氏が個人的に反対の意を表明したことも騒動に拍車をかけ、外交問題にまで発展しました。その頃に、シンガポールの変わった罰則としてガムに関する規制も報じられました。

 
ノーベル賞のパロディとして知られるアメリカのイグ・ノーベル賞がリー・クアンユー氏に授与されたのも同じ年のこと。心理学賞授与の理由は「シンガポール国民300万人に対して、ツバを吐くこと、ガムを噛むこと、ハトに餌をやることに処罰を設ける効果を30年間にわたって研究し、心理学でいう『負の強化』を実践した」というものでした。ここまで読んだ方は、ガムを噛むことが禁止されているわけではなく、ガムを規制する法律を制定したのがリー氏ではないことはもうお分かりでしょう。

 
約20年前、商用インターネットが普及する以前の状況が、ガムにまつわる話からも見えてきます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.246(2013年11月18日発行)」に掲載されたものです。

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