シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP年末である理由

社説「島伝い」

2013年12月16日

年末である理由

12月8日夜にリトルインディアで発生した暴動では、救急車やパトカーなど本来であれば負傷者や被害者を救助・保護するための車両までが暴徒に襲われ、火をつけられるといった非常に危険な状況が発生し、シンガポール国内はもちろん、海外にも大きなショックを与えました。現場に居合わせた人は「まるで戦場のようだった」とその恐ろしさを語っていました。

 
これまでシンガポールは、外国人の労働力を活用しながら発展を遂げてきました。そして今、外国人の安価な労働力に頼り過ぎず、生産性を向上させることで労働力不足を補おうとしている過渡期にあります。そのため、労働者1人あたりの負荷が以前に比べて高くなっている労働環境もあるようです。

 
ちょうど1年ほど前には、中国人のバス運転手達による違法ストライキが大きなニュースになりました。日頃から彼らの中で積もっていた不満が爆発してしまった形ですが、いずれも年末が迫ったこの時期に発生したことは、偶然では片付けられないように思われます。

 
日本でも、12月に入る頃から交通事故や火事の発生件数が毎年のように増加します。直接の原因はいろいろありますが、ちょっとした不注意によって引き起こされるものも少なくないようです。1年の終わりが近づき、その年の疲れが溜まってくる時期であることも要因として十分考えられます。

 
疲れや不満は目に見えるものではないため、本人でさえ蓄積していることに気付かない場合があります。しかし、疲れや不満がたまり過ぎると、集中力を欠いて失敗したり、体を壊してしまうことも。そうなる前に休息を取ったり、運動したり、趣味の時間を楽しんだりと、うまくストレスを解消しながら心身のバランスを保つことが大事です。

 
また、ストレスをためないよう注意が必要なのは、社会や国も同じです。今回、何百人という外国人労働者による暴動が発生したことは、決して軽視できるものではありません。なぜ彼らがあのような凶暴な行動に走ったのか、我々もシンガポール社会の一員として考えなければならないでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.248(2013年12月16日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP年末である理由