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社説「島伝い」

2016年3月7日

「全体に意識を向ける」

3月・4月は、日系企業の人事異動が1年の中で最も多い時期。赴任して最初の数ヵ月は、勝手がよくわからない中で覚えなければならないことが山のようにあり、とにかく必死で仕事をするしかないという場合が多いでしょう。

 

目の前にやらなければならないことが山積みになると、その山を少しでも減らそうと、一つ一つのことだけに意識が行ってしまい、全体を見なくなりがちです。ある仕事を、とにかく期限までに終わらせることだけ考えて進めた結果、仕事自体は間に合ったものの、その時のアウトプットが再び別の仕事のインプットとして目の前に現れ、「こうなることが初めから分かっていれば、最初の仕事でもっと工夫できたのに」と残念に思うことも……。もちろん、仕事を一つ一つきちんとやり遂げるのは大事なことです。しかし、言われたことや決められたことをただ盲目的にこなしているだけでは、創意工夫は生まれにくく、凡庸な仕事になります。「言われたことしかしない」と感じる部下や同僚がもし周りにいたら、忙し過ぎて全体が見えていないのか、あるいはそもそも全体を意識する姿勢がまだできていないのか、見極める必要があるでしょう。

 

仕事に取り組む際に、その仕事だけでなく周りのことも含めて全体を見ようとすると、その分の時間はかかるかもしれません。しかし、全体の中でどのような位置づけにあるのか、着地点はどこで、誰にどのようなメリットがあるのか、といったことを明確にできれば、仕事の内容もより優れたものにできます。見直しや手直しなどに余計な時間や労力を取られることが少なくなり、結果的には全体を把握しないまま仕事をした場合よりも短い期間で完了することが可能になります。

 

さらに、全体を把握して仕事をするくせが付けば、自分で考えて判断できることが増えるため、おのずと実力も付きます。部下が常に全体を意識して仕事をするよう仕向けることは、上司が人材育成の一環としてやるべきことの一つかもしれません。個人だけでなく組織全体でも積極的に取り組んで定着を図れば、会社としても良い成果が期待できるでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.297(2016年3月7日発行)」に掲載されたものです。

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