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社説「島伝い」

2014年4月7日

新入りの効果

4月は私達日本人にとっては新年度の始まり。日本では、この春から社会に出る若者たちと共に、転職して新たな職場でスタートを切る人たちも多いようです。シンガポールでも、この時期は新しく赴任して来た方とお会いする機会が増えます。

 
「新入り」であることには不安がつきものですが、本来は業務に必要な知識でも「わかりません、教えてください」と言えるのが特権。新卒組はこれを毎日のように言いながら学んで行く日々が続きます。しかし、転勤組や転職組は、経験年数が増えるほどこの特権を使いたがらなくなります。前職や前任地での実績に対する自負やプライドが邪魔をしてしまうようです。

 
それでも、後で自分で調べたり、場を移してこっそり質問したりと、きちんと解明して知識を吸収する努力をできればまだ良いのですが、新しい環境では他にも覚えることが多く、慣れないことに手間取っているうちに、わからないことをそのままにしてしまうケースも少なくありません。放置すれば最終的には組織としてのミスにつながり、本人のプライドが多少傷つく程度では済まないような大きな痛手になることもあります。

 

 

また、「郷に入っては郷に従え」ということわざの通り、まずはその環境の既存のルールや習慣に従ってみることも、新入りにとっては大事な心得。一見理解に苦しむことでも、よく確かめたら実はその環境の特性に一番合っていたりします。新しい環境を理解した上で、さらに良くするための改善案が出せれば、良い形で新入りを卒業し、大きな戦力になれるでしょう。

 
新しい環境で働くことは、本人だけでなく、実は受け入れる側にとっても大きなことです。例えば新しいメンバーに作業手順を説明するだけでも、なぜその順番なのか、なぜそのタイミングで行うのかなど、自分達の手順を改めて考え直したり、改良できる点に気付いたりします。一歩先に進むためのチャンスであるのは、新入りの立場にとってばかりではないのです。

 
年始とは少し違ったポイントとして、人の入れ替わりが多い年度替わりの時期は、自分を見直し、個人としても組織としてもさらに成長するための大きなチャンスと言えます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.254(2014年04月07日発行)」に掲載されたものです。

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