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社説「島伝い」

2016年2月1日

「アンパオはお年玉ではない?」

シンガポールで暮らしていると、店にパイナップル・タルトが並び始めたり、赤や黄、金色の華やかな飾りを目にする機会が増えることで、チャイニーズ・ニュー・イヤー、いわゆる旧正月が近づいていることを実感します。食料品などは旧正月前の需要増にあわせて値段が上がることも。意外なところでは散髪の料金もこの時期は通常より少し高くなることが多いようです。「お客さんからの『アンパオ』を半強制的に取っている」という説を唱える人も……。

 

「アンパオ」は福建語読みで、漢字で書くと「紅包」。北京語読みの「ホンバオ」もよく耳にします。日本人には「お年玉のようなもの」と説明されることが多いのですが、年神様のためにお供えして、年神様に頂いた魂が宿った「餅玉」を家長が家族に分け与えたことに由来する「お年玉」とはやはり少し異なるようです。

 

アンパオの始まりは中国の宋代あるいは清代など諸説あります。一般的には既婚者や年長者が赤い小さな紙の袋に少額のお札を入れて渡します。その相手は子供だけでなく未婚の成人も含まれ、祖父母に渡す人も。身内だけでなく、職場で上司が部下に渡すことも多く、客が若手の店員などにあげることも。袋の赤い色は幸福の象徴でかつ邪気を払うとされ、アンパオを渡すことは「相手に福をあげる」という意味があるそうです。金額は偶数で、2や8など縁起が良いとされる数が好まれます。4は「死」と同音で不吉な数字とされているので要注意です。

 

アンパオを渡すのは、旧正月期間である旧暦1月1日から15日の間。アンパオの習慣を初めて知った方やまだあげたことがない方も、今年は2Sドル札を多めに、なるべくきれいなお札で用意して、「福をあげる」という気持ちでアンパオを渡してみては。ローカルスタッフとのコミュニケーションの一つとして良いのはもちろん、日本人など中華文化圏以外の出身者にも渡してその意味も伝えると良いでしょう。アンパオを受け取った相手の笑顔を見ることが、自分自身にも小さな福をもたらしてくれます。無邪気に「アンパオくれないの?」と聞かれたら、「福をくださいな」と言われているのだと解釈してみてください。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.296(2016年2月1日発行)」に掲載されたものです。

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