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社説「島伝い」

2014年6月16日

良いものを取り入れる工夫

先日日本で、自転車に乗っていた高校生が軽ワゴン車にはねられ、その車に自転車ごと約1キロメートルも引きずられて重傷を負った事故が報じられました。日本では、近年交通事故による死者数自体は減少傾向にあり、警察庁が今年2月に発表した統計によると昨年は4,373人。しかし、その中で歩行中のケースが1,584人と自動車乗車中や二輪車乗車中のケースを上回っており、実は2008年以降6年連続で最多となっています。また、国土交通省の統計によると、生活道路での死傷事故率は幹線道路の約2倍にも上っています。

 
シンガポールでは、高速道路での玉突き事故は頻繁に見かけますが、市街地、特に生活道路での死傷事故の割合はかなり少ないようです。今年2月に陸運庁が発表した統計によると、昨年の交通事故による死者数は159人で、うち歩行者は43人でした。シンガポールの人口は日本のおよそ20分の1であることを考えても、交通事故で歩行者が犠牲になるケースは日本より少ないといえます。

 
シンガポールでは、住宅地の道路などに「ハンプ」と呼ばれるかまぼこ型の障害物が数多く設置されています。これが、歩行者を車による事故から守る上で大きな役割を果たしていると考えられます。ハンプを通過する車両は必然的に徐行することになるからです。ハンプは日本でも一部で導入されていますが、まだ普及の途上です。住宅地での導入が進めば、より多くの歩行者の命を守ることができるでしょう。

 
ハンプのように、世界各国で広く導入されている良いものや制度など、日本ではまだ導入されていない、あるいは導入が進んでいないものは、他にもいろいろありそうです。島国という環境もあって、船舶や航空機で運べる大きさを超えるもの、たとえば交通に関する仕組みなどは、近隣諸国のものが地続きで入ってくる機会が多い他の国々に比べるとやはり伝わりにくい面があるかもしれません。海外で生活し、ビジネス活動を展開する中で良いと感じたものを日本に伝えることは、海外在住者の大事な役目の一つではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.259(2014年06月16日発行)」に掲載されたものです。

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