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社説「島伝い」

2014年7月21日

制度導入を成功させるには

今月からフレックスタイム制の導入をさらに企業に促すため、「ワークプロ(WorkPro)」の内容が改められました。「ワークプロ」とは、シンガポールの人材開発省(MOM)と労働力開発局(WDA)が共同で進めているプログラム。昨年4月に開始され、企業に対しては、労働環境改善や再雇用、高齢者雇用促進の取り組みなどに奨励金を出して支援しています。個人に対しても、再就職支援ワークショップへの参加費の肩代わりなどの支援があります。

 
今回の「ワークプロ」の改定では、フレックスタイム制の試験導入に1万Sドル、さらに全社的にフレックスタイム制を導入した企業には1万Sドルを追加交付するとのこと。勤務時間の弾力化で、十分な能力を持っていながら年齢や健康上の理由、家庭の事情で就業をあきらめていた人材の活用が進み、人材不足が解消されることなどが期待されています。シンガポールでも以前からフレックスタイム制の導入事例はあったものの一般的ではなく、これまで多くの企業が導入に対して慎重だったようですが、今後は実際に導入を進める企業が増えるかもしれません。

 
フレックスタイム制については、通勤ラッシュが始まる前の早朝に出勤して夕方早い時間に帰宅し、家族とゆっくり過ごしたり、趣味に興じたりと、仕事もプライベートも充実させられるのが良い点として広く知られています。その一方で、日本のように90年代半ばにフレックスタイム制導入の機運が高まったものの、制度導入後は出社時間が遅くなっただけで効率化や生産性の改善にはあまり繋がらず、その後多くの企業で相次いで廃止されてしまった、というケースもあります。

 
フレックスタイム制は、多様な働き方を可能にする仕組みであり、その導入を国が後押しすることは、企業にとっても従業員にとっても有益なことです。ただ、せっかくの良い仕組みも、うまく活用できなければ意味がありません。導入によってより良い職場環境を作り、企業としての能力や生産性を上げていくために一人ひとりの役割は何か、それぞれが何をすべきか――企業も従業員もしっかり考えて行動できるかどうかが、制度導入の成否の鍵になりそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.261(2014年07月21日発行)」に掲載されたものです。

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