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社説「島伝い」

2014年8月4日

値上げ合戦の行方は

マレーシアは先月、シンガポールが8月から外国登録車両の乗り入れのための料金「VEP(Vehicle Entry Permit)」を値上げすることを受けて、ジョホール州とシンガポール北部をつなぐコーズウェイ(第1リンク)の通行料の大幅な値上げ、年内に同州でのVEP導入を発表しました。また、シンガポールも、マレーシアの値上げに合わせて通行料値上げの考えを示し、さながら値上げ合戦の様相を呈しています。シンガポール、マレーシアそれぞれの国の登録車両にとっては、両国間を行き来する際の通行料とVEPが二重に上がるため、急な負担増に戸惑いの声が出ています。

 
小さな島国であるシンガポールにとって、渋滞による交通マヒは致命的。新車購入権(COE)で国内の登録車両数を調整し、交通量が多い場所や時間帯に合わせて自動料金収受システム(ERP)を運用するなど、これまでさまざまな施策を実施してきました。外国登録車両についてもVEPを設定することで、シンガポールへ入国する車両数がある程度抑制されてきました。

 
今回の一連のニュースは、1990年代半ばにマレーシアでサードブレーキランプがない車両へ罰金が科されることになった時を思い出させます。当時はサードブレーキランプがない車両がほとんど。仕事でもプライベートでもマレーシアとの行き来が多いシンガポールの自動車所有者の多くが、シンガポールでは義務付けられていないサードブレーキランプを急遽取り付けるはめになり、シンガポールの人々の間では、「なぜ罰金まで」という不満がくすぶりました。

 
シンガポールとマレーシアは、水の供給や、ジョホール水道にある島の領有権など、大小さまざまな問題をめぐり長年対立してきました。しかし近年は、マレー鉄道の土地返還問題の決着を境に両国関係が改善、シンガポール~クアラルンプール間の高速鉄道建設計画も本格化しています。陸路でのマレーシア入国時に必要だったカード記入も廃止され、第1リンク、第2リンクの渋滞が緩和されるなど、人や物がより行き来しやすい環境が整いつつあります。良い流れがある今の状況に、値上げ合戦が水を差すことがないよう願っています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.262(2014年08月04日発行)」に掲載されたものです。

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