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社説「島伝い」

2015年8月3日

「おなじみのサービス」が持つ可能性

冷蔵・冷凍が必要な物を日本から海外へ送ることができるヤマト運輸の宅配サービス「国際クール宅急便」が今月いよいよシンガポールで開始されます。小口の冷蔵・冷凍宅配サービス自体は、日本郵政が「クールEMS」という形で2013年4月から提供していますが、両社のサービスには、荷物の発送が可能な日にちやエリア、価格体系、送ることができる荷物の大きさなど、さまざまな違いがあります。利用者は、自分たちのニーズに合わせてサービスを選ぶことができます。
日本国内ではおなじみのサービスでも、国境を越えるとなると、日本からは輸出、シンガポールでは輸入の手続きが必要。それらの手続きも含めて発送から短期間で冷蔵・冷凍の荷物を届けるサービスの実現には、さまざまな困難も伴ったでしょうし、24時間通関可能な沖縄国際物流ハブなどの条件が揃ってこそ可能になったもので、実は我々の想像以上に画期的なサービスです。
日本から生鮮食品や飲料などをシンガポールへ取り寄せる場合、従来はコンテナ単位など大口でなければ難しく、小規模な食料品販売店や飲食店はサプライヤーを通じてのみ入手可能でした。そのルートに加えて、小口でも直接仕入れが可能になることで、店舗で扱う商品やサービスにも新たな変化がありそうです。
また、従来は日本国内の配送先にのみ対応していたネット通販サイトが、ここ数年世界各国でサービス提供を開始、現地の言語・通貨での決済に対応するようになりました。日本の製品がより手軽に購入できるため、シンガポールでも人気を得ていますが、その背景には冷蔵・冷凍での宅配サービスまで可能なほど充実してきた、物流サービスの存在があります。
宅配サービスやネット通販サイトはなじみのサービスで、よく知っているとつい思いがちですが、日本とは違った、シンガポールという環境ならではの使い方もあるはず。単に「便利になるね」で終わらせずに、新しいサービスの内容を積極的に把握し、どのように使って何が実現できるか、よく考えてみることも必要でしょう。なじみのものだからこそ、新たな発想や展開が生まれれば、さらなるビジネスチャンスに大きく発展する可能性もありそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.285(2015年08月03日発行)」に掲載されたものです。

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