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Vol.309

2016年9月5日

小川 栄太郎さん

シンガポール・タイラー・プリント・ インスティテュート(STPI) プロジェクトリーダー/チーフプリンター

Vol309P01_COVER_r1大阪府吹田市出身。カメラマンの両親のもと、幼少期からモノづくりの現場に親しんでいた小川さん。勉強は苦手だったが美術の成績は良く、成長するにつれ芸術関係の仕事へ憧れを持つのは自然な流れだった
芸術の道を志したのは高校2年生の時。美術の先生に自身の絵が褒められたことがきっかけだった。「学校内の風景をペインティングしていた時、先生にすばらしい!と言われました。どの生徒にもそう声をかけていたので特別なものではなかったと思いますが、今でも鮮明に覚えているくらい、私にとっては本当にうれしい一言でした」。その時に芸術系の大学に進学したいという気持ちが固まり、東京造形大学へと進学。しかし希望していたペインティングコースは選考から漏れてしまい、仕方なく版画コースに進むことになった。残念な気持ちはあったが、版画を始めてみると意外に面白く、次第にその世界に魅了されていくことになる。
大学卒業後は横浜市にある版画工房に勤め、約5年間修行を積んだ。次は海外で修業したいと思い立ち、受け入れ先を探していた際にアメリカの版画家ケネス・タイラー氏がシンガポール政府と共同でシンガポールに版画工房兼ギャラリーを建設するという計画を聞きつけた。慣れない英語を使いながらタイラー氏と一緒に働きたい思いを手紙に書き綴って送ると、ニューヨークで面接したいという返信が届いた。小川さんよりも英語が得意だったという理由で、大学の同級生でもあった妻の玉江さんを連れて面接に向かい、これまでの経験、版画作品やその技術の話、今後の夢を一緒に語っているうちに、夫婦そろっての採用が決まった。「私たちが離婚しないようにと、彼が妻も一緒に採用してくれるという話をしてくれた時は驚きましたが(笑)、有り難い申し出だったので引き受けることを決め、2001年に2人で来星することになりました」。
シンガポール・タイラー・プリント・インスティテュート(STPI)で版画刷師として働き始め、これまで世界各国の80人以上のアーティストとコラボレート、今後は日本の現代作家・大竹伸朗氏の展覧会も開催予定で、シンガポールの美術業界の質の向上に一役買っている小川さん。「版画は型の世界。しかしその型にはまらないような、面白く画期的な芸術作品をつくっていきたい」と、今も新しいアート活動を思案中だという。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.309(2016年9月5日発行)」に掲載されたものです。

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