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Vol.303

2016年6月6日

岡野 喜一朗さん

ラッフルズジャパニーズクリニック 眼科医

千葉県市川市出身。少年時代に『週刊少年マガジン』で連載されていた真船一雄氏による医療漫画『スーパードクターK』に夢中になり、高校生になる頃には人の役に立てる医者になりたいという目標が固まっていた。東京慈恵会医科大学医学部に入学し、実習などを重ねて医師国家試験に合格。研修医となった岡野さんは総合医療科、内科、外科、小児科、麻酔科など、様々な分野で経験を積んだ。

 

専門科を決めるにあたり、当初は、死に直面する医療の世界の中でも唯一、新しい生命の誕生の瞬間に立ち会える産婦人科を希望していたという。後に眼科を専門とした理由について尋ねると、「一般的に他科の手術の場合、患者さんが手術の成功を実感するのに時間を要しますが、一方の眼科は手術後、眼を開けた瞬間に、患者さんとともに手術の成果を共有することができます。脳が感覚器から受け取っている情報量の割合は、視覚が8割と言われるくらい、眼は重要な感覚器。患者さんが術後に感動する姿を見て、眼科医になりたいと強く希望しました」と話してくれた。

 

東京労災病院眼科医員、東京慈恵医科大学付属病院眼科助教授を経たのち、アメリカ合衆国オハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学に研究留学。多国籍の研究員とともに研究や議論を重ねながら貴重な日々を過ごし、この時の研究論文が『Nature chemical biology』の表紙に掲載されたことも感慨深かったという。

 

その後日本へ帰国するも、海外で過ごす日本人の心の支えとなりたいと考えるようになり、2015年11月にラッフルズジャパニーズクリニックの眼科医に就任した。「どんなに英語が話せる日本人でも、英語で医師の話を聞くのは多少なりとも不安が付きまとうと思います。海外だからこそ日本人であることで安心感を与えられ、気軽に相談してもらえるような医師でありたいです」。

 

来星後、家族との時間が増えたという岡野さんは、食事に出かけたり、子供たちの勉強に付き添ったりと、公私共に充実した生活を送っている。今後は趣味の時間を増やしつつ、シンガポールにおける手術資格の取得を目指し、インドネシアやマレーシアなどからも患者が診察に訪れるような眼科医療のハブ的な存在になりたいという。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.303(2016年6月6日発行)」に掲載されたものです。

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