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Vol.251

2014年2月17日

内田 千裕さん

シンガポール・ダンス・シアター(SDT) プリンシパル・ダンサー。

asiax (27)シンガポール唯一のバレエ団に所属、数々の舞台で主役として踊る。2歳半からバレエ教室に通い始め、16歳で参加したアジア・パシフィック国際バレエ・コンクールで出光興産特別奨学金を受賞、翌年からオーストラリア・バレエ・スクールに留学した。

「趣味はバレエ」と言うほど、踊ることも見ることも大好きだ。今はYouTubeも活用し、世界のいろいろなダンサーの踊りを見て研究している。

SDTに入団したのは、2005年、19歳のころ。「正直言って、シンガポールにバレエのイメージはありませんでした」。だが、クラシック、ネオクラシック、コンテンポラリー、様々なジャンルに取り組む自由な気風が自分に合っていた。さらにSDTには世界各地から若い団員が集まっている。「色々なバラエティのある踊り、色々な国の人がいて、今はここがすごく好き」。
辛い経験もあった。今から2年半ほど前、リハーサル中に転んで右腕を骨折。日本で手術を受けて6ヵ月間の休業を余儀なくされた。1キロの重りを載せての腕のリハビリは、痛みで涙が出ることもあった。しかし、そのけがが踊りに向き合う姿勢を見直すきっかけになったという。
バレエ界は狭き門だ。SDT入団以来、うれしさで「とにかく一生懸命、全力」で駆け抜けてきた。「変に力が入りすぎて、空回りしていたのかもしれない。強弱をつけてバランスよく、自分をもっと大切にしなければいけないと思いました」。
3月の舞台、「ロミオとジュリエット」でジュリエット役を踊る。お気に入りの演目だ。「悲しいエンディングですが、そこまでして誰かを愛せること、深い愛が素敵だなと思うんです」。役になりきって踊る、自身の持ち味を生かし、表現力を磨いていくことが今の目標だ。
一方、バレエだけでなく、実はプライベートも愛に満ちている。来年、シンガポール在住の日本人の恋人と、結婚式を挙げる予定だという。「これからは、式の準備やお料理ももっとがんばりたいですね」。人を愛し、自分も愛する。当地で経験したいろいろな思いを胸に、踊りも今、円熟の境に入っている。

 

写真提供:シンガポール・ダンス・シアター

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.251(2014年02月17日発行)」に掲載されたものです。

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