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表紙の人

Vol.253

2014年3月17日

令官 史子さん

NYK SHIPMANAGEMENT PTE LTD・Vessel Manager。

asiax (25)「船のお世話係」。耳慣れないVessel Manager(船舶管理人)という仕事について、こう解説する。所有者から預かった船を、安全かつ経済的、計画通りに運航するにはどうすれば良いか。年単位の管理費予算に応じ、船体や機器のメンテナンスをする。

そして、航海中は、乗組員らと常に連絡を取り合って船の動静を把握し、万一のトラブルの際は緊急対応にあたる。「船の使用期間は15〜20年。その一生をみるのは、まさにロマンですね」。
2013年4月から在星拠点の同社に出向し、就航船管理業務を担当。そして、同年末、6000台を積載できる自動車運搬船1隻を担当するVessel Managerに就任した。乗組員25人の船は、今も世界中の港に立ち寄りながら航海を続けている。近年、海運需要が高まる一方で、海賊などのリスクも増している。「今日もいい子でやってるかな?がんばって航海しろよー。転ぶなよー、と」。ダイナミックな仕事だが、毎日ドキドキする心境は、さながら子供を見守る親のようだ。
北九州工業地帯で育ち、海原をかける大きな船にあこがれた。船舶海洋工学などを専攻。日本郵船入社後、来星までの9年間は新造船業務に携わっていた。海運業界の中でも技術部門は「男の世界」。技術部門では同社初の女性社員で、今でもアジアで女性の技術者は珍しい。作業服にヘルメット姿で監督業務をこなしていると、声を聞いて驚かれることも多かった。体力的に劣るなどデメリットもあるが「一目で覚えてもらえる、お得な部分もありました」。船の全体像を把握できるようになりたいと志願し、新造船から今の業務に転じた。
良く笑い、よく飲む。笑顔と大きな声が、周囲をパッと華やかにさせる。その人柄からか、日本から友達が続々とやってきて、休日はもっぱらツアーガイドで大忙し。また、在星の人々との輪も広い。同僚や、インド国籍の人が多いという同じVessel Managerたちとの交流はもちろん、母校、九州大の同窓会や縁のあった長崎の県人会などにも参加。「異業種の人たちと会い話を聞いて、自分の世界を広げるのが楽しい」。やっぱり、広い世界に漕ぎ出すのが好きだ。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.253(2014年03月17日発行)」に掲載されたものです。

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