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表紙の人

Vol.255

2014年4月21日

酒井 奈美子さん

和太鼓奏者。

asiax (23)「響屋」代表、「天鼓」主宰。スクールなどを運営する「響屋」代表、演奏グループ「天鼓」主宰。シンガポール和太鼓界の第一人者だ。

きっかけは1997年、ASEAN各国と日本の共同事業「東南アジア青年の船」への参加だった。各国に寄港しながら、各国青年代表との交流や議論を深める船旅。その中で日本文化を紹介しようと練習を始めた。「身体に響く音がいいなと思いました。もともとお祭り好きでしたし」。日本帰国後も地元の和太鼓グループに参加し、のめりこんでいった。
2000年に来星。日本人会和太鼓同好会などで経験を積んだ後、2004年に初めて自分の和太鼓を購入し活動を本格化。当地の愛好家などと演奏を共にする機会も増え、2007年に演奏グループ「天鼓」を立ち上げた。当初、メンバーは夫と当時5歳の長男だけ。練習場所もなく、自宅リビングで座布団を叩く練習から始めた。音楽スタジオを借りて「和太鼓の音が大きすぎる」と追い出された経験も。だが、「シンガポールで和太鼓を演奏したい、広めたい」。その一心で徐々に活動の場を広げ、2009年には「響屋」も創設、自前の常設スタジオを構えるに至った。
たった家族3人から始めた活動だが、現在は国籍も様々な50人以上と常時一緒に活動をする規模に。また、チームビルディング目的の企業の研修など、単発での受講申し込みも多いという。さらに、シンガポール芸術委員会(NAC)の教育プログラムに登録され、最近はローカル校などで子供たちに教える出前授業の機会も増えている。「皆で息を合わせる時の集中、達成感は太鼓ならでは。普段目立たない人が輝く場面も多く、太鼓で変わる人もいる」。近年は「三宅島芸能同志会」など、日本から著名な和太鼓奏者を招く機会も多い。年に一度のコンサート「響」は恒例になり、篠笛や三味線などの和楽器にも取り組んでいる。
初めての和太鼓を買ってから今年で10年。今の目標は、日・星国交樹立50周年となる2016年に、シンガポール初の「和太鼓フェスティバル」を開催すること。大規模に開催するには課題も多いが、多くの和太鼓好きが一堂に会する日を夢見る。「1人じゃできないことが皆ではできる。それが太鼓の魅力ですから」。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.255(2014年04月21日発行)」に掲載されたものです。

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