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ビジネス4賢者が送る、成功への道しるべ

2015年5月4日

リーダーシップ編〈第5回〉「結果」は得るものであって「学び」はプロセスからのみもたらされる

仕事は結果だ!」とよく言われますが、本当にそうでしょうか。確かに結果は大切です。でも、私はあえて結果ではなく「成果」が大切なのではないかと思っています。

 

辞書を引くと「結果とは、ある原因や行為から生じた、結末や状態。また、そのような状態が生じること」などと書いてありますが、私にとっての「結果」とは「最終的に得られたたった一つもの」であり、「成果」とは「そのプロセスの中で得られた小さな結果も含めた全てもの」を指すと考えています。要するに、成果は結果を得るプロセスで複数得られるものであると理解しており、さらに言えば「結果は得るものであって学びをもたらすものではない。学びはプロセスからのみもたらされる」と思っています。
例えば、以下の2つのシチュエーションにおける気持ちを考えてみてください。

 

1つ目は、富士山の一合目からヘリコプターに乗り、10分ぐらいで頂上まで着いた時の気持ち。

2つ目は、同じく富士山の一合目から自分の足で10日間をかけて、苦労や困難を乗り越え、痛い思いや嫌な思いもしながらやっと頂上へ到達したときの気持ち。

 

どちらが達成感や充実感、さらには今後の人生・仕事に活きるような学びを多く得られると思いますか?もちろん後者ですよね。

 

1つ目の場合は、地上よりはるか空の上から景色を見て「うわー、きれい」と言いながら仲間と和気あいあいと、けれどあっという間に頂上に着き、地に足をつけてからは頂上からの景色しか見ることができません。
2つ目の場合は、頂上にたどり着くためのプロセスで、土を感じ、空気を感じ、もしかしたら怪我をして痛い思いをするかもしれません。一方で仲間と助け合い、時にはけんかなど嫌な思いをしながら、協力し合ってやっとの思いでたどりついた達成感も得られます。その成果を仲間とも分かち合い、きれいな景色を一緒に見て、それまでの苦労を振り返りながらいろいろなことを感じます。更には下山してからも仲間同士でその旅の思い出や苦労話に花が咲き、いつまでも共通の話題で盛り上がる大切な存在になるかもしれません。

このように、もちろん頂上へ着いたという「結果」も大切ですが、その結果を得るためにプロセスからどのような「成果」を得たのかということも大事なのではないでしょうか。
私も自分の人生を振り返ると、不思議と今も仲良くしているのは、成果を得るためのプロセスを分かち合った仲間がほとんどです。
そういった意味では、必要な結果を得るためにどのようなプロセスを踏んだかという、プロセスをしっかり評価することに私は大賛成です。なぜなら、プロセスから得た学びの方が、はるかにその後の仕事や人生に大きな結果をもたらす大切な学びとなるからです。

「安楽な日々は過ぎ去る、充実した日々は積み重る」という大前研一氏の言があります。同様に、結果は一瞬の快楽ですが、学びは積み重なります。ぜひ、「結果」よりも「成果」を大切にしてほしいと思います。

shimadzu嶋津 良智(しまづ よしのり)

一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事、リーダーズアカデミー学長。2度の株式上場を経験、日本・シンガポールなどアジアを中心に経営コンサルとして活動。世界14都市でチャリティービジネスセミナーも開催。最強の部下を育成し、最強の組織を作ることで業績向上に寄与する独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書累計は100万部超。韓国・中国・台湾でも翻訳されている。

リーダーズアカデミーウェブサイト:www.leaders.ac

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.279(2015年05月04日発行)」に掲載されたものです。

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