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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2014年8月18日

住宅はジリ安、オフィスは当面ジリ高が続きそう

国土開発省(MND)が7月末に発表した2014年第2四半期の不動産統計では、民間住宅の売買、賃貸指数共に弱含みで、微減ながら3四半期連続の下げ。かたや、オフィスの売買・賃貸指数はかなり強含みでジリ高となっています。

 

住宅賃貸料の「下げ」ペース加速の可能性:

3本の折れ線グラフの最下線が民間住宅の賃貸相場指数推移で、現状、下げのピッチは速くありません。特に、日系企業の借上社宅の価格帯では、依然として需要が堅調なため、直ちに賃貸料が大幅下落することはなさそうです。(参照:図1)

 

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ただし、特に2014~16年にかけて高水準の竣工が続くため、今後賃貸料は「下げ」ペース加速の可能性が高いでしょう。需要増で吸収できるのは年1万戸程度のため、2013年第1四半期に5.2% だった空室率は2014年第2四半期には 7.1% まで上昇しており、2016年まで上昇が続きそう。特に、外国人駐在員が選好しない地域の空室率上昇が加速しそうです。売買・賃貸市況がザラ場になると、家主のDefault(=物件競売)やデベロッパーの経営難や破綻(=建設中断)にも繋がりうるので要注意。(参照:図2)

 

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オフィス賃貸相場軟化は2015年後半までなさそう:

一般的には、2015年の竣工予定面積が5万5,000平米と極端に少なく、その結果、オフィス賃料上昇が加速していると言われています。(参照:図3、4)

 

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しかし、筆者の私見では……

政府の規制強化により、不動産投機(売買)は住宅や工業不動産から、オフィスや店舗に劇的にシフトしていまだ加熱状態にあり、高値で購入した投資(投機)家は高い賃料で貸すか、フロア単位やユニット単位で転売するか、あるいはテナントを追い出し物件再開発を図る場合が多く、その結果、売買・賃貸共に、需給タイト感が極めて強くなっています。

 

通常のオフィスや店舗物件賃料高騰の余波は、conservation houseと呼ばれる旧式長屋物件の需要急増も招き、政府が相場冷却化のため、飲食店やホステルへの転用制限に動き出しています。

 

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.263(2014年08月18日発行)」に掲載されたものです。

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