コラム

Eis園長先生の教育談議

親思う心に勝る親心3

1ヵ月ほど母がシンガポールに滞在しました。その間、毎朝、母と息子をバス停まで送りその後、30分ほど散歩をすることが日課になりました。色々なことを話しながら、母のペースに合わせて、と言ってもかなり早いペースで、75歳とは思えない速さです。近所のおばさんの話から、選挙運動の話まで、この時とばかり話し続けます。ある時、障害をもった姉の話になった時、「あの子よりも先に死ぬわけにはいかない。」きっぱりと言い切っていました。母は毎月第一日曜日、姉のいる施設に行きます。芝公園から秋津までおよそ2時間、駅まで歩き電車をいくつか乗り換えバスに乗ります。母にとって決して楽な道のりではありません。


子どもは本当に可愛いものです。出来ることなら何でもしてあげたい。親心です。しかし、何でもやってやりすぎて甘やかすと甘えん坊になりだめな人間になるのではないかと心配になります。我が家でも何かあると「お父さんが甘やかすからいけない!」といわれてしまいます。しかし、子どもの健全な心の育成には愛情をたっぷりかけて良いのです。そして、自分の受けたたくさんの愛情を他に向けて出すことをきちんと教えることが肝心なのです。他に愛情を注ぐことの出来る子どもは健全に精神が発達します。自立する心も育ちます。生きる力が身につきます。


このことは子どもに限ったことではありません。人に何かをしてあげるパワー、愛情のアウトプットのパワーは大人も精神を健全にするだけではなく、生きる力も生むのです。引きこもりだった子どもが、祖母が倒れ、その面倒を見はじめたことをきっかけに、立ち直ったと言う話を聞いたこともあります。落ち込んで、どうして良いかわからない時、たいがいの場合自分のことしか考えていないのです。母にとって姉を見舞う、面倒を見ているという意識は、精神を強く健全にするだけでなく、生きる力まで与えているのです。


幼稚園でも、子どもたちが保育者から学ぶ以上に、保育者は子どもたちから多くを学んでいるのです。それだけでなく幸せも頂いているのです。本当にありがたい仕事です。心より感謝しています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.3(2008年04月21日発行)」に掲載されたものです。
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