コラム

Eis園長先生の教育談議

運動会

先日、日本人小学校の運動会に行ってきました。チャンギ校、クレメンティー校共に個性あふれる感動的な運動会でした。自分が気になるのはなんと言っても卒園生。「がんばっている、がんばっている。」体も顔つきもなんだかお兄さんお姉さんになって、すぐには分からない子どももいました。一等賞になったり、リレーの選手だったり、よさこい踊りが決まっていたり、とても楽しい2日間でした。中でも嬉しかったのは、障害を持ったT君を最後までリードしながら大玉ころがしをしたKさん。少々内気で恥ずかしがり屋だったKさんが堂々と立派にT君をリードしていたその時の自信に満ちた顔と、そのタイミングのよさに感動しました。うまくT君を競技に参加させながら苦手な部分だけをそっと助けてあげる素晴しい出来でした。知らない人が見たらT君が障害を持っていることは気がつかなかったのではないでしょうか。T君も満面の笑顔で競技を終えました。障害を持った子どもとかかわる先生方にぜひ見せたいと思うほどでした。


T君を助けたのはKさん。でも、Kさんがあんなに自信を持ち他人を助けてあげられるようになったのはT君との出会いがあったからではないでしょうか。違う一人一人が、係わり合い助け合うことによって愛情が生まれます。瀬戸内寂聴さんは「生きることは愛すること。」とおっしゃっていました。愛情を生む行為が生きていることなのです。


障害を持った子どもがクラスに入ると子どもたちの精神は豊かに健全に成長します。それには段階があります。自分とは違うということを理解し一緒にいることを受け入れることが始まり。その子のために待たされることを許し、その子のために我慢することを許すのです。次に何かをしてあげることを学びます。手を引いてあげたり、教えてあげたり。その次にその子どもにとって本当に心地良いか、気持ちを察してあげる力がつきます。そしてみんなの精神が健全に豊かに成長するのです。


さて、大人の中でKさんのように人の心を察してあげながら助ける大人がどれほどいるのでしょう。損得勘定を中心とした大人の論理が横行する中、卒園生に教えられた一日でした。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.134(2008年11月17日発行)」に掲載されたものです。
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