Oさん(43)の会社が吸収合併されることになりました。Oさんはこれまで通り、リージョナル・ダイレクタとして、引き続き勤務することが決まっており、社員がリストラになることもないため、そのような心配は要りませんが、Oさんには、これから同僚となる相手方の社員、特にマネージメントスタッフとの人間関係が不安でなりません。合併に先立ちこれまで数回顔合わせや会議をしてきましたが、「最初からでしゃばってもなあ」「皆自分より、頭が切れそうだな」「こんなことを言うのは、この場ではおかしくないだろうか」「まずは、相手がどういう人間か知った上で‥」などと考え、自分の考えとは合わない意見が出たり、間違っていると思ったりしても、それに対して反対をしたり、質問をしたりできないまま3週間が過ぎました。最初は、自分自身にイライラしたり、情けない気持ちが沸いたりしましたが、先日、状況は全く変わっていないにもかかわらず、自分が一切何も感じていないことに気が付き、心配になりました。
カウンセリングにいらっしゃった際に、チェックリストをしてみるとOさんはアレクシシミア(無感情症)という状態になっている可能性が高いようでした。これは、感情表現を押し殺し、自分でもあまり自分の感情に気づかない状態です。男性に多いことの理由に「男は感情を表に出してはいけない」という社会通念が存在し、何があっても顔色一つ変えない人間が大人の男としてカッコイイとされていること、また、プライドなどがあげられます。しかし、感情として表現、経験されないストレス刺激は、自分で対処行動をとることもなく、他者に伝わることもなく、体に影響しつづけます。アレクシシミアの人は、ストレスによる健康障害である心身症に侵されやすいことが、既に分かっています。
カウンセリングでフォーカスするのは、健康的な感情管理を学ぶことです。具体的には、アサーティブトレーニングや、ジャーナル(日記)を通して、普段は表現できなかった自分の感情を思い切って表出し、自分でそれに気づくことです。簡単なようですが、やってみるとなかなか難しいものです。また、これまでの対人関係を見直し、自分の感情を思い切って表現できる家族、友人、職場の人間関係が築けているのか、また、これからは意識的にそういった場面を持ち/作り出し、自分の感情への感受性をさび付かせないようにします。これらは、実際に行ったことをセッション中に話し、レビューを行ったり、今後のプランを話し合います。自信喪失や自己尊重心が低く、人よりも自分が劣っているというコンプレックスが示唆される場合は、その原因を一緒に探り、それぞれにあった療法を通して、解決していきます。
文=山形千尋
Counselling Place LLP心理カウンセラー(カウンセリング学修士・心理学士)
オーストラリア・カウンセリング協会正会員、シンガポール心理学会アソシエイト会員
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