Oさんの長男(17)は、暇さえあればインターネットかゲームをして時間を過ごします。仕事で、コンピュータの必要性と偉大さに理解を示す父親でも、少しやりすぎではないか、と感じ始めました。と言うのも、長男は食事もそこそこ、部屋に引き揚げ、パソコンの前で、何時間も過ごすのです。朝起きられないこともよくあります。
インターネットの「メール」や「チャット」に、極度にはまり込んでしまい、ネット以外のことを犠牲にし、日常生活に支障をきたすようになる精神的な失調症状をインターネット依存症といいます。約3分の2は男性で、性格的には対人関係が苦手で内向的、几帳面、生真面目人が多く、さらに論理的な思考を好む、いわゆる理屈っぽい人や、あるいは有能で責任感の強い人もなりやすい傾向にあります。
長男は、現在のところ学校へは休まず通っていますが、人によっては睡眠不足になり、遅刻や欠席をしたり、「引きこもり」にまで発展することもあります。それは、匿名性の高いコミュニケーションツールで常にバーチャルな世界に生きていることが楽であり、本音と建前や相手の気持ちなどを考えて会話をしなければならず、あいまいさのある現実の人付き合いが煩わしくなってくるためです。他には、自分の限界が分からなくなる、時間の感覚がなくなる、邪魔されるのが我慢できなくなる、「黒か白か」のやり取りや思考を好むようになる、人を見下すようになる、などの症状があります。
自覚症状が全く無いため、長男のように、家族や友人がカウンセリングに連れてくるというパターンが殆どです。未成年者へのセラピーは、大人の場合と治療法が多少異なり、ご両親であるO夫妻へのカウンセリングも行います。その際には、一貫性のある家族の協力体制を計画します。「パソコンを没収すればよいのでは」と思われるかもしれませんが、それでは子どもの反抗心を増長させることになります。要は本人が今の状態が「依存」であることを認識し、そのためのパソコン使用時間制限の親子間での妥協点を見出すのです。学習で使用する場合は除き、最終的には1日2時間くらいを目安にしました。本人へは、決めた時間を基に、スケジュール表作り、使用内容を記録してもらいます。後はカウンセリングを通し、空いた時間を旅行や週末の外出など家族と一緒に過ごす時間にあてたり、人との直接的なコミュニケーションをとる機会を意識的に増やすよう促していきます。また余暇はスポーツなどを楽しむようにするのもよいでしょう。幸いにも、もともとマニュアル思考を持つ人がなりやすいため、自分で立てたスケジュールなどは守れる人が多いこの依存症の治療は比較的スムーズに進むことが多く、3~5カ月で、治ることが多いようです。長男はその後、ビーチバレーを始め、新しい友達もできたそうです。
文=山形千尋
Counselling Place LLP心理カウンセラー(カウンセリング学修士・心理学士)
オーストラリア・カウンセリング協会正会員、シンガポール心理学会アソシエイト会員
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