コラム

心理カウンセラー・ダイアリー

不登校が始まったら

O夫妻の長女(9)が4年生になり1学期も終わりに近づきました。元来読書やテレビを見て過ごすのが好きな、おとなしい子どもでしたが、学校では楽しく過ごしていると思っていました。ところが担任から「保健室で過ごすことが多い様です。十分な睡眠や食事を取っていますか?」と電話があり、驚いたO夫人は「どうかしたのか」と長女に聞きました。すると「クラスの皆から嫌われいる」と言います。その後「もう学校に行きたくない」と愚図るようになり、説得も空しく2週間登校できませんでした。O夫人は途方にくれ、長女を連れ来談されました。
不登校の原因は様々ですが、大きく分けると
  1. 学校生活に起因:友人や教師との関係をめぐる問題、学業不振など。
  2. 本人に起因:病気による欠席など。
  3. 家庭生活に起因:家庭の生活環境の急激な変化、親子関係をめぐる問題、家庭内の不和など。
また、多くはいずれかの組み合わせによる複合的なケースです。とかく親は「いかにして学校に戻らせるか」という事ばかりに気を取られがちですが、それだけでは解決にはなりません。戻ったところで、再び不登校になるのは時間の問題です。考えなければならないのは、本人がその問題に取り組み、乗り越えることができる為の「コーピングスキルを習得する」ことです。
不登校の根本原因の中で、本人の努力では簡単に変えることが不可能に見える部分を考えてみましょう。例えば「クラスの皆から嫌われている」は真実でしょうか?そうであれば何か理由があるのでしょうか?その理由は納得のできるものでしょうか?改善することはできるでしょうか?それとも、捉え方が過敏すぎはしないでしょうか?その場合、気持ちを落ち着かせ、冷静になれるスキルを学ぶことや、考え方の転換を図る練習をします。教師や両親の対応で改善できることはあるでしょうか?
また忘れてはならないことの一つに、援助者である家族のこころの状態があります。特に母親が「自分の育て方が悪かったのでは」「対応に問題があったのでは」と悩み、落ち込んだり、自分を責めたりし、ストレスや疲労感からか鬱症状に陥ったり、気力消失を経験することもあります。また、思い込みが激しくなったり、孤独感を感じたり、独り言が多くなることもあります。O夫人は、その為に軽度の睡眠障害と鬱症状に陥っていました。長女への十分な援助をするためにも、自分の「こころの健康」取り戻す必要がありましたので、O夫人へも、同時にカウンセリングを勧めました。また月に一度は両親で来談されることに同意されました。学校へは、両親了解の上、長女の性格や状態をスクールカウンセラーや担任へ伝え「対応の仕方」などの協力をお願いします。この様に、不登校は「家族の問題」として受け止め、本人、家族、学校がともに努力や対応していく必要があります。また家族で心理療法を受けることが改善へのポイントです。
※本文に登場する人物や内容は、実際のケースをサンプルにしたフィクションです。

文=山形千尋

Counselling Place LLP心理カウンセラー(カウンセリング学修士・心理学士)
オーストラリア・カウンセリング協会正会員、シンガポール心理学会アソシエイト会員

Counselling Place

1 Scotts Road #25-10 Shaw Centre Singapore 228208

Tel:6887-3695

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.102(2007年07月16日発行)」に掲載されたものです。
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