Oさん(42)が、仕事からのストレスが原因で初めて来談されて、3カ月が経過しました。今では、できるだけ部下へ仕事を任せ、彼らのやる気を培うとともに、相互の信頼関係も少しずつ築けてきました。その甲斐あって、休日に持ち帰った仕事に費やす時間も減りました。「それは良かったですね。奥様も喜ばれていることでしょう」と言うと、「それが、そうでもないんです。これまで仕事ばかりで、家のことは全て任せっきりだったでしょう、だから今更あれこれ口出すのも、と思い、何か聞かれても、彼女を尊重して、したいようにすればいい、と答えるんです。するとなぜか機嫌が悪くなるんですよ。何とか宥めようと、掃除を手伝ってみたり、皿を洗ったりするんですが、今度は、余計なことをして仕事を増やすな、と怒られる始末です。」
O夫妻は結婚17年になりますが、夫婦間のコミュニケーションが効果的になされていないようでしたので、翌週のアポイントメントでは、カップルセラピーを行うことにしました。大切な人へ愛情表現をするときに、私たちは5つの言語(方法)
- 言葉
- 共に過ごす有意義な時間、
- ギフト
- サービス/行動
- 身体的触れ合い
を使い分けています。しかし、これらの中に、最も自分の好きな言語が、必ず1つあるのです。それを、その人の「基本愛情言語」と呼んでいます。「基本愛情言語」は、その人がパートナーから、最もして欲しい愛情表現であり、自分が最も使っている言語です。問題は、自分のパートナーが別の「基本愛情言語」を持っている場合、思うように相手に気持ちが伝わらないことが発生することです。
幾つかの質問をご夫妻にしていく中で、Oさんの愛の言語は「サービス」つまり、何かをしてあげること、夫人の言語は「言葉」で、あることが分かりました。O夫人曰く「私は専業主婦なので、家のことは自分の仕事だと思っています。ですから、夫には、時間のあるときは家事を手伝ってもらうよりもゆっくりと休んだり、子どもたちと話したりして欲しいんです。無論、そういう気持ちには感謝しますけれど、掃除や皿洗いが彼の愛情表現なんて思ってもみませんでした。それより、私は、夫が私の作った料理を昔のように褒めてくれたり、新しいヘアスタイルに気付いて何か言ってくれることを望んでいるんです。」それに対してOさんは驚いた様子で「残さず食べるって事が、旨いってことじゃないか?それに髪型が変わったなんて気が付いても照れくさくて、わざわざ言いやしないよ。君こそ、私が仕事で疲れている中、家事を手伝おうってしている、これが愛する女房のためでなきゃ誰のためって言うんだ」と言います。
お互いの言語が分かった所で、過去の失敗や勘違いを例に挙げながら、理解を深めることができました。その後ケーススタディとしてロールプレイを行いました。お互いの言語を認識し、相手の言語での愛情表現を心がけることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。また不必要な言い争いや不満も回避できることでしょう。
※本文に登場する人物や内容は、実際のケースをサンプルにしたフィクションです。
文=山形千尋
Counselling Place LLP心理カウンセラー(カウンセリング学修士・心理学士)
オーストラリア・カウンセリング協会正会員、シンガポール心理学会アソシエイト会員
Counselling Place
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Tel:6887-3695
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.100(2007年06月18日発行)」に掲載されたものです。