成長企業のヒミツに迫る! 人材紹介会社Aquentに
ビジネスサポート部門“Eloquent Staffing”誕生
経済低迷が伝えられる中、快進撃を続け、新規事業部を立ち上げた会社がある。人材紹介会社のエイクエント(Aquent)である。その成長のヒミツを探るべく、同社を訪れてみた。
コーポレートカラーのオレンジ色を小気味よく効かせ、上品ですっきりしたイメージにまとめられたインテリア。程良い明るさで、温かみを感じさせるやわらかい照明。「ハロー!」というフレンドリーな挨拶とスマイル――オフィス街ラッフルズ・プレイスにある人材紹介会社・エイクエント。
エイクエントとは、ギリシャ語とラテン語を組み合わせた、『追随しない者』という意味を持つ造語である。飛躍の決意を込めてつけられた社名という。エイクエントは、スタートからユニークだ。時は1980年代半ば。ちょうど、DTP※革命が市場を圧巻し始めた頃、米ハーバード大学の学生3人が、マックを使った編集が行える人材を紹介するビジネスを思いつき、Mac Tempと名付けた会社を立ち上げた。エイクエントの前身である。
米国ボストンの学生寮で誕生したビジネスは、着実に成長し続け、今や世界18ヵ国・73拠点のオフィスを構えるまでに成長。マーケティング、クリエイティブ分野に特化した人材紹介会社としては、世界最大規模を誇る。日本では東京、大阪、名古屋、福岡、札幌の5都市に拠点を持ち、ここシンガポールでも、既に11年の実績を持つ。
※DTP:desktop publishingの略称。出版物のデザイン・レイアウトをコンピューターを用いて作成、出力する編集システム。
エイクエントの大きな特徴は、提供するサービスにおいてクオリティを重視すること。その一環として、即戦力のある経験者のみが登録できるシステムを採用している。
同社では、人材を求める企業と求職者を結ぶスタッフを、エージェントと呼ぶ。“求職者個人を、エージェントとして企業に売り込む”という発想である。元来、クリエイティブ専門の人材を紹介する会社として出発しただけに、エイクエントには広告代理店出身者や化粧品業界ブランドマネージャーなど専門職出身のエージェントも少なくない。エージェント自身、業界知識が豊富で、企業ニーズや専門職に関する造詣が深い点も、同社の強みと言える。
ユニークなのは、同社ではエージェントにも強いクリエイティブマインドが求められる点だ。人材を求める企業のニーズや抱えている問題点を把握する一方、求職者に関しては、レジュメだけではわからない適性やポテンシャルを探る。そして、エージェントがクリエイティブな発想を活かして、企業と個人のベストマッチを追及する。機械的に求人案件と人材をマッチングするのではなく、エージェントがいるからこそ発掘できた人材と企業を結ぶ――それがエイクエントのビジネススタイルだ。
また、とりわけ異彩を放っているのが、110%ギャランティーシステム。これは、万一、紹介者の試用期間中のパフォーマンスが不十分だった場合、顧客企業に対して110%の返金を保証するシステムで、クオリティの高いサービス提供を目指す方針の一環である。
エイクエントを利用している企業の50%、登録者の35%以上は、口コミ・紹介によるもの。この数字は、徹底してクオリティの高いサービスにこだわってきた同社への高い評価の現われと言えるだろう。
どんな業種であれ、組織を成功させるカギとなるのが、優れたビジネスサポートチームの存在である。オフィスマネージャーから総務業務、セールスコーディネーター、秘書、レセプションなど、ビジネスサポートの守備範囲は広く、様々な業界で常に人材需要のある分野と言える。
エイクエントが、マーケティング、クリエイティブ専門の人材紹介会社としてネットワークを構築、信頼を獲得していく中で、「ビジネスサポート分野の人材も紹介してくれないか」という既存顧客からの要望が強まってきた。
そこで5年前、ビジネスサポート部門に特化した新しい事業部、イロクエント・スタッフィング(Eloquent Staffing)を立ち上げることになった。同事業部はオーストラリアとイギリスの4都市にオフィスを持ち、今年5番目の拠点をシンガポールに開設した。先に同事業部を設立したオーストラリアでは、2007年度38%、2008年度15%増益と順調に売り上げを伸ばしてきている。
エージェントの沓掛美千氏
しかし、景気の行方が懸念される状況下で、なぜ業務拡張なのか。「実はよく聞かれます、どうして今、拡張なのかと。シンガポールにビジネスサポート部門を設置する計画は以前からあり、当社としては計画通りのネットワーク拡張なんです。市場が厳しい時こそ、優秀なスタッフの配置が必要とされます。」(イロクエント・スタッフィング部門エージェントの沓掛(くつかけ)美千氏談)
シンガポールのイロクエント・スタッフィング部門では、主に日本人及び日本語スピーカーを紹介していく。グローバル・ネットワークの強みを活かし、当地の登録者がシンガポール以外で採用となったり、日本の登録者がシンガポールで採用となるケースも想定している。「日本人の方にも、今後はグローバル市場を見て積極的に活躍の場を広げていただきたいですね。東京支社の登録者でも、次のステップとして自分のスキルを海外で活かしてみたいという優秀な方が多数いらっしゃいます。」(沓掛氏談)
同部門でも、エイクエントの創業以来の方針に則り、登録者には実務経験が求められ、専門スキルや即戦力、語学力、適性、ポテンシャルなどが評価される。企業ニーズや採用の背景などを分析する一方で、登録者の適正なスクリーニングを行い、ふさわしい人材を発掘する。
さて、日本でのエージェント経験も豊富な沓掛氏に、転職希望者へのアドバイスを伺ってみた。「先ず、これまでの経験やスキルを活かして、今の自分には何ができるのか、そして今後どのようなキャリアパスを描きたいのかということをよく考えてみることが必要です。『自分は何が強いのかよくわからない……』というのではなく、自分のことを客観的にかつ冷静に分析し、自信を持つことも大切です。日本人はよく自己アピール下手と言われますが、目標達成に向けた強い意志やキメ細かさなど、日本人の仕事スキルの水準は非常に高いと思います。」
当社のサービスは、単に求職者のレジュメを送付する、という類のものではなく、 人材を多彩なレベルで評価し、本当にふさわしいと判断される人材を企業にご紹介していくということです。
人材と仕事の関係とは、4つのパターンに大別できます(下図参照)。(1)一見してふさわしい人材(経験者)と、その人にふさわしい仕事、(2)一見するとふさわしい人材だが、実はその人には相応しくない仕事、(3)経験上は不向きな人材だが、実はその人にふさわしい仕事、(4)一見して不向きな人材と、やはり向いていない仕事、の4つです。(1)の場合の仲介は誰にでもできますね。(4)の見極めも難しくはありません。
| Look right is RIGHT(1)一見してふさわしい人材 (経験者) |
Look right is WRONG(2)一見ふさわしい人材、 実はふさわしくない仕事 |
| Look wrong is RIGHT(3)一見ふさわしくない人材、 実はふさわしい仕事 |
Look wrong is WRONG(4)一見して不向きな人材、 向いていない仕事 |
私たちが真価を発揮するのは、(2)と(3)のケースです。職歴を見ただけでは図れない、個人の適性やポテンシャルなどをも評価し、企業とのマッチングを探る。職種自体は未経験であっても、その方にマッチすると判断出来れば、大胆な提案をさせていただくこともあります。
文= 青木明幸
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