
ジェイティービー株式会社
広報室長
辻野啓一氏
1976年日本交通公社(現・株式会社ジェイティービー)入社。アメリカ、香港、シンガポールなど海外での勤務経験も豊富。2005年より現職。各社が主催する広報業務をテーマにしたセミナーの講師としても活躍している。

JTB PTE LTD 支店長
宇野孝志氏
1979年、日本交通公社(現・株式会社ジェイティービー)入社。シカゴ支店、外国人団体専門旅行支店など担当し、1999ー2001年シンガポール支店駐在。2005年シンガポール支店の支店長として再着任。

シンガポール政府観光局
東京オフィス 所長
柴田亮平氏氏
1995年シンガポール政府観光局入局。シンガポールへの日本人観光客誘致、マーケティング、PR活動に携わる。東京都の観光審議委員会委員も兼任。
むしろ、変わってこないのが問題ですね。日本のマーケット論について少しお話ししますと、2006年の対前年出国者数は100.8%、微増です。その中で女性の出国者数は前年を割っており、反対に男性は増えています。これは案外ショッキングです。理由は、中国、韓国等へのビジネスの需要が増えているからで、総数としてはそれに支えられており、観光目的の渡航者は弱含んでいます。なおかつ、20〜35歳までの層は、ここ10年ぐらいの間対前年2〜3%減です。そこを60歳以上の団塊世代の人達の出国数が7〜8%伸びている事によってカバーされている状況です。数字だけを見ると、今後の少子化傾向も見越すと、マーケットは縮小する傾向です。8月22日付けの日経MJ(流通新聞)に、20歳代の生活実体調査についての記事がありました。結論として、この世代は、「車不要」、「酒飲まない」、更に家に籠って「出掛けない」志向だというのです。車、アルコール業界共に、大変ショックを受けました。その世代をなんとか元気にしないと、そのままの状態で年を重ねてしまう。以前は20代だけだったのが、いまや34、5才までがそうなって来ている。ライフスタイルはなかなか変えられないとすれば、それがそのまま40、50代になっていく。団塊の世代が消費に大きく貢献するのはあと10年くらいと言われる中、消費欲は減りつつあるのです。
それを受けて、我々は「ガクタビ」という卒業旅行の企画商品を昨年度につくりました。幸いそれがとても好評でした。彼らの世代に海外旅行の素晴らしさを知らせる工夫をしないとこのままじり貧になっていかざるをえない。そういうマーケットとシンガポールとをどう絡めるかは、今後とても重要です。
また、最近では、地方からの渡航者が減少しています。地方都市発のフライトが減便になったことで、成田まで行って海外旅行する煩わしさが理由です。そこを増やすにはチャーター便の増便が考えられます。ポイントは、そのチャーター便をどう増やして行くか、素早く手を打って行く事でシンガポールがマーケットとして元気になると思います。
シンガポール航空では、A380の導入の遅れ、シンガポールの順調な景気を受けてのビジネス需要の増加のためにチャーター便に機材を回せない現状があるようです。以前はピーク期に名古屋や札幌からのチャーター便があったんですが。
そんな中で、現在修学旅行の需要が勢い良く伸びています。シンガポール政府観光局はどこよりも積極的にプロモーションされていますよね。海外への修学旅行が県の教育委員会によって、年々解禁されてきている中、シンガポールは、安全で衛生面にも問題ないという、ご父兄にとって一番気にされることがクリアされ、英語圏であるというのも都合がいい。また、単一民族の国ではなく、多民族の国で、中国系を中心に、インドやマレー系の人々が、宗教や文化が違っても仲良く暮らしているという状況が、今日の紛争などが尽きない国際社会にあって、若い世代にみてもらいたい場所だと私は思います。一番最初に経験する海外がシンガポールであるというのは、将来またリピーターとして戻って来るきっかけをつくる要素が含まれている。長い目で言えば、将来のシンガポールに向けてのファン作りに貢献すると見ています。
海外旅行の素晴らしさは一度経験すれば分かる。若干の不満があっても、大部分の人は感動して帰ってきます。その前段階として海外旅行に行かないのが問題なのであって、そのチャンスをつくる修学旅行というのはとても重要です。
ただ難しいのは、ライバルも増えています。カジノホテルの「ウィン・マカオ」につづいて8月28日に「ベネチアン」がマカオにオープンしました。マカオへ行く日本人渡航者数は、年間で30%程増えています。マカオに引き上げられる形で香港も伸びています。香港は、家族旅行としてのイメージが低かったせいか、7、8月は香港よりもシンガポールの方が人気でした。でもディズニーランドやマカオにもアトラクションができてしまったことで安閑としていられなくなりましたね。またベトナムへのチャーター便ができたり、最近では、沖縄と海外旅行が選択肢としてバッティングする。やはり、常に話題をつくっていかないと厳しい状況ですね。
2009、2010年にマリーナとセントーサにできる総合リゾートは、対日本マーケットとしては起死回生の機会、また起爆剤としてみています。2008年度から本格的にプロモーションを始める予定です。来年度に向けては、世界一大きい観覧車「シンガポールフライヤー」やF1レースなどを通して話題作りをしていきます。1996年と比べると、日本からの渡航者数は約半分ですが、シンガポール全体を見ますと、実は好調で、海外からの渡航者は約970万人来星しており、2年連続で伸びています。おそらく今年は1000万人を突破するという見通しです。日本だけが下がっている。その理由としては、日本からの海外旅行の渡航先のバラエティーが増えた、もう一つは、シンガポールの牽引セグメントであった若い女性層と家族連れの数が落ちて来ているのが原因です。
それには、テクニカルな問題も含まれます。観光というのは双方向の交流ですから、シンガポールから日本への渡航者数が増えている現状は、喜ばしい反面、飛行機の座席不足を招いています。今後、飛行機が大型になり、両国間の輸送力アップが待たれるところです。シンガポール航空のA380機が来年の夏頃には日本へ飛ぶと言われています。この機種が日本に乗り入れるのは最初となるので、旅行業界の中だけでなく日本にとって社会的にも大きなニュースになるでしょう。
また、渡航者数の相対的な地位は、現在、ピーク時の半分近くに減少していますが、日本人観光客が使う消費金額は、他の国からの観光客より突出して多い。そこに活路を見出したいですね。
まだまだ増えると思います。最近の円安傾向も手伝って、日本がシンガポール人にとって2番目の人気デスティネーションになっている。日本ブームというのも言い過ぎかもしれませんが、JNTO(国際観光振興機構)のプロモーションや、テレビ番組のジャパンアワーの影響も強いですよね。日本で売れるべきデスティネーションはまだまだありますが、「雪」や「蟹が絶品」という要素を持つ北海道が目立って取り上げられているという事実はありますね。
シンガポール人の方が座席を占めているといっても、九州地区などでは、まだまだ余裕がありますので、他地域のPRにも力を入れたいです。
シンガポール人の学生を日本へ連れて行くという活動も多々展開しています。日本と違って、学校が休みの期間に希望者を募集して実施する形で、中身が濃く内容も大変真面目です。熊本の水俣病資料館や広島の平和記念資料館がツアーに盛り込まれたりと、ほとんど遊びの要素がないツアーが多い。
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