現地で得た確かな情報を提供し、日系企業のアジア進出をサポート

シンガポールをはじめ東南アジアへ進出する日系企業が増えている一方で、撤退のニュースを耳にする。そのような結果になった原因はいろいろ考えられるが、総じて海外に進出する日系企業に足りないのは「情報」と「人脈」だと、日本戦略情報機構CEO＆マネージング・ダイレクター田村耕太郎さんはいう。

「6億人の人口を抱え年率6％での成長が見込まれ、平均年齢20台のASEAN（東南アジア諸国連合）は、日本の大企業から中小企業にとって最大の成長ポテンシャルを持つ市場です。今後10年で日本のGDPと並びその後の10年で日本のGDPの倍になる市場です。その上世界一日本への好感度が高い地域。東南アジアでは、信頼できる地域情報と人脈を持つことが、日本企業にとっての課題ですが、変化の激しいASEANの政治・経済・ビジネス情報に追い付いていない印象があります」。

このような現状を踏まえ、日本戦略情報機構では、地政学、すなわち地理的要素が政治、経済、外交に及ぼす影響について研究している。その研究に基づき、東南アジア現地で収集した情報を会員向けにメールで発信している。

政治とビジネスが密接に繋がるASEAN。情報と人脈が不足する日系企業

「ASEANは、日本に比べれば国家資本主義的な国が多く、日本よりも政治と経済、ビジネスの距離が近く、一部を除いて汚職や腐敗も激しい地域です。現地でこそ得ることができる情報、私が兼任教授を務めるシンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院や付き合いのあるシンクタンク、政府関係者から得た情報なども活用し、発信しています。会員はアジア進出に関心を持つ企業経営者の方などが多いです」。

田村さんは東南アジアに進出する日本企業の情報収集力と活用の現状に警鐘を鳴らす。

「日本の大企業の情報収集能力は欧米企業に比して劣化している印象を持ちます。その理由はいまだに2～3年で転勤を繰り返すことと、社内コンプライアンスが厳格化していることがあります。2年ちょっとでいなくなるのではそんな人と本気で情報交換して付き合う現地の人も限られてきます。今のままでは日本企業の東南アジアでのプレゼンスは欧米や中国や韓国の企業に落ち続けるのではないかと危惧します。また白人に弱く、欧米のインテリジェンス企業から高い情報を買わされている印象もあります。インドやインドネシアのように政権が変わったら、人脈ネットワークも変わる。個別にはしっかり人脈を築いた人もいますが、それが組織で共有されていない印象もあります。非常にもったいないです」。

日本戦略情報機構が発信する情報は、日本企業がASEANに進出するにあたって失敗しないための「予防接種」でありたいと田村さんは話す。

「日本とASEANの架け橋となり、日本企業、特に今後日本の人口減少と高齢化で増えるであろう中小企業や地方の企業の海外進出をサポートしていきたい。Eメールでの会員向け情報発信のほか、ビジネスセミナーの開催やASEAN進出を真剣に考えていらっしゃる企業のコンサルティングも丁寧にやるので少数ですが行っております」。