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2007年1月1日

都市、王政国家の出現(歴史3)

今回はインドの歴史の3回目、紀元前1000年ごろのアーリヤ人の東岸への移動から、紀元前300年のインド統一までの時代です。

 
紀元前1500年ごろインド西北のアフガニスタンの方向から侵入してきたアーリヤ人は、紀元前1000年ごろから東方のガンジス川の流域へ移動を始め、その後紀元前600年ごろには東部ベンガル湾沿いのガンジス川下流にまで達していきました。

 
この過程で古代王政国家が形成され、都市や商業が発達し、裕福な商人が現れました。この紀元前5,6世紀は、インド史の中でも活気に満ちた時代でした。仏教やジャイナ教など、当時革新的な宗教が成立したのもこの時期でした。

 
このダイナミズムは、アーリヤ人が移動していく過程で文化的な融合が起き、新たな文化が生まれていくという中でもたらされたものでした。
アーリヤ民族の東方への移動により未知の新しい土地に定住していったことで、アーリヤ人男性が先住民族であるドラヴィダ人女性をめとっていきました。インドは現在アーリヤ族が7割を占め、ドラヴィダ族、モンゴロイド族、その他という人種構成です。その中の部族民族分布をさらに細分化するとその影響がよくわかり、純粋なアーリヤ人はパンジャーブ地方からデリー周辺に至る西北インドに多く、ビハール州やコルカタに至るガンジス川流域の住民は、アーリヤ・ドラヴィダ族という、アーリヤ人とドラヴィダ人の混血種に属する人が多く住んでいます。

 
このような混血が行われた結果、新たな民族が成立することとなり、その民族はそれまでのアーリヤ人の伝統的な風習、儀礼、信仰をそのまま遵守せず、それまでのバラモン教の文化を重要視しなくなり、自由で型にとらわれない態度をとるようになりました。このような自由な文化的背景のもと、仏教やジャイナ教が現れたのでした。ちなみに正式な統計ではありませんが、私の感じでも、東部ガンジス川下流に位置するコルカタなどの地方の人は、ヒンズー教徒ですが牛肉は比較的食べる人が多く、これなどはその自由な雰囲気の一端を示しているのかもしれません。

 
ガンジス川流域に移住してきたアーリヤ人たちは、肥沃な土地を積極的に開墾し、森を切り開き、田をつくっていきました。そして多くの農産物を産み出し、彼らの物質的生活はきわめて豊かなものとなっていきました。そして物質が豊かになるにつれ、しだいに商工業が発達し、紀元前700年ごろになると多数の小都市が生まれていきました。

 
このような中でガンジス川流域を中心として、西北カシミール地方のガンダーラ国から中央部デカン高原近く、そしてガンジス川下流までの範囲で、部族体制を基盤とした少数の支配階級が統治する国々ができていきました。その後小国はしだいに大国に併合されていき、部族体制を破った新しい王政国家が現れていきました。

 
そのような国の中ではじめに強大になったのは、ネパールとの国境に近い現在のウッタル・プラデーシュ州北東部に成立したコーサラ国で、農業生産が伸びたことで、富裕な国になりました。その後コーサラの南東に位置しガンジス川主流域のマガダ国が、紀元前5世紀末に宿敵のコーサラ国を破ってガンジス川流域の覇権を握り、インド統一支配の基礎を築くことになりました。

 
マガダ地方は米作農業がいちじるしく発達したところで、ガンジス川を介し水運により諸支流との交通にも便利な位置にありました。また当時インドにおいてちょうど鉄器時代が始まった時期で、その地域は重要な鉱物資源である鉄鉱石の産地でもありました。そしてそのことがマガダ国における武器の製造技術を発展させ、強国にしていきました。現在でも特にマガダ国のあったジャルカンド州は有数の鉄鉱石産出地で、インドとしても鉄鉱石の生産は世界一です。この時代商工業も発達し、貨幣経済が進展していきました。
このようにしてコーサラ国征服後もマガダ国は周辺に勢力を拡大し、北インドの多くの部族制国家を倒して、強大な国家を築いていきました。

 
しかしマガダ国は紀元前413年にナンダ王に滅ぼされ、その後紀元前317年にはマウリヤ朝がそのナンダ朝を倒して、インド統一帝国を建てることになりました。
次回は経済の3回目で、インドの経済構造を、地域間格差という観点からみていきます。

文=土肥克彦(有限会社アイジェイシーauthor

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインド・ダスツール社と協業、オフショア・ソフト開発に携わる。
2004年有限会社アイジェイシーを設立、ダスツール社と提携しながら、各種オフショア開発の受託やコンサルティング、ビジネス・サポート等のサービスで日印間のビジネスの架け橋として活躍している。
また、メールマガジン「インドの今を知る! 一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.089(2007年01月01日発行)」に掲載されたものです。

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