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2007年7月2日

紀元後のグプタ朝の時代(歴史5)

今回はインドの歴史の5回目で、紀元前180年ごろ崩壊したマウリヤ帝国のあと、約500年に及ぶ北インドの分裂を統一したグプタ朝について示します。

 

 

マウリヤ朝の崩壊以後、さまざまな王朝が生まれては消えてゆく時代がしばらく続きました。その後、長期にわたって王朝を築いたのはグプタ王朝で、320年から550年ごろにかけて北インドで栄えました。4~6世紀のインドは、グプタの時代と言われています。

 

 

それ以前に西インドを中心に治めていたクシャーン朝はイラン系の外来王朝でしたが、グプタ朝はインドの土着王朝でした。

 
グプタ朝はクシャーン朝滅亡後、インド北東部マガダ地方から興ったチャンドラグプタ一世(320年~335年頃)が、現ビハール州南部辺りにあったパータリプトラに都を置き、領土を拡大して行きガンジス川中流域の覇権を握りました。

 
その後第2代のサムドラグプタ(位335年頃~376年頃)のとき、ガンジス川上流域の諸国を併合し、ラジャスタンから中央インド、デカン東部にまで勢力を拡大し、領域内の支配体制を固めました。またデカンのヴァーカータカ朝と姻戚関係を結んで、南インドにまで政治的影響を及ぼすこととなりました。ただ南インドでは諸地域に王朝が割拠しており、併合することまではできませんでした。

 
こうしてグプタ朝は、ベンガル湾からアラビヤ海に及ぶ北インド一帯を支配する帝国を築き、全盛期を迎えたのでした。

 

 

グプタの時代は、ヒンドゥー文化が花開いた時代でした。サンスクリット語は公用語となり、サンスクリット文学が最盛期の時代で、二大叙事詩である「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」、カーリダーサの戯曲「シャクンタラー」などが生まれ、マヌ法典も完成しました。この点から、今日のインド人学者は、この時代をインド文化の「黄金時代」とも称賛しています。

 
またこの時代はアジャンター石窟寺院の壁画が有名で、薄い衣がぴったりとはり付いて肉体の起伏をあらわにする表現を好んだサールナート派の仏像が作られた時代でもあります。ただグプタ朝は、バラモンの宗教と文化を尊重していました。グプタ朝後期にヒンドゥー教が隆盛したことにより、仏教は勢いを失っていきました。クシャーン朝の異民族支配を一掃したグプタ朝の下で、時代の風潮が変わり、ヒンドゥー至上となったことが背景にあります。

 

 

グプタ朝時代は、村落では階級と身分の分化が顕著になっていきました。バラモンは王のために祭式を施行し、村落社会の秩序と身分を安定化させ、維持していくため、ヒンドゥー教を浸透させていきました。

 

 

しかし五世紀中ごろ第五代スカンダグプタが即位した後のころになると、グプタ朝内部で混乱がおきるようになり、諸地方の支配者たちも王朝の統制から離れて自立するようになってきました。こうしてグプタ朝は領土がビハールとベンガルだけに狭められ、550年ごろ滅亡してしまいました。

 

 

一方この頃中国や朝鮮から、仏教経典を求めてはるばるインドまでやってきた僧侶が多くいました。4世紀から11世紀までの間、その名が知られた僧侶だけでも150人以上います。そしてその中でも最も有名なのは玄奨です。彼はハルシャが北インドを平定した629年から17年間インドを旅し、1,335巻もの経典を翻訳しました。彼が著した「大唐西域記」では、ハルシャの都カーニヤクブジャの繁栄について、「城郭、城池が堅固で、広壮な家々がつらなり、花咲く林の池は光鮮やかで鏡のごとく澄んでいる。諸地方の珍しい品物は多く集まり、住民は生活を楽しみ、家々は富裕である。」と記されています。
仏教は玄奨のあと600年間存続しましたが、13世紀に滅びました。

 
一方仏教と同時期に興ったジャイナ教は、インド西部でヒンドゥー教と近づきながらも諸王朝の保護を受けて繁栄し、ムスリム征服後も衰退しませんでした。

その後8世紀中ごろになると、ガンジス川中流域、その下流域のベンガルと、デカンの三つの地域で強大な王朝が現れ、それから約200年間、三王朝が覇権をめぐって抗争を繰り広げていくことになりました。

次回は経済に移り、消費ブームを支え、外資が続々と進出している自動車業界について記します。

文=土肥克彦(有限会社アイジェイシーauthor

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインド・ダスツール社と協業、オフショア・ソフト開発に携わる。
2004年有限会社アイジェイシーを設立、ダスツール社と提携しながら、各種オフショア開発の受託やコンサルティング、ビジネス・サポート等のサービスで日印間のビジネスの架け橋として活躍している。
また、メールマガジン「インドの今を知る! 一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.101(2007年07月02日発行)」に掲載されたものです。

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