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2008年4月7日

インドの食事情2(社会7)

今回インドの社会・文化の7回目、および食事情の2回目です。
前回では、主にカレーを中心に食事情について示しました。今回はその他の食に関する事情について示すこととします。

 
前回も示しましたように、インドではベジタリアンでないノンベジの人でも牛は食べません。また国民の14%を占める、イスラム教の人は豚肉は食べません。
インドでは普通肉料理で使われる肉は、羊肉のマトンかチキンです。チキン料理ではタンドリー・チキンが有名です。タンドーリ・チキンはヨーグルトにチキンを漬け、これにさまざまな香辛料をつけて土のかまど(タンドーリ)で焼き上げたものです。

 
三方を海に囲まれたインドでは、魚介類も重要な食材となっています。特にムンバイからケララに至るインド西海岸沿岸は、アラビア海の豊かな海の幸をふんだんに使ったシーフード料理で有名なところです。また、インドは、多くの種類の野菜やフルーツが産出されています。一年中さまざまな旬のフルーツが店先に並び、人々のビタミン源となっています。中でもインドの果物のNo.1はマンゴーで、4~6月が最も旬な時期です。

 
地域的な特徴としては、北インドはナンや薄く焼き上げたチャパーティーといったパン類を主食としています。これは昔から良質の小麦の産地であったパンジャーブ地方があったことで広がった食文化です。また北インドは、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品を多く使うといった特徴があります。香辛料には、クミン、コリアンダー、ガラムマサラなどがよく用いられます。こういった香辛料には中国の漢方薬と同じ物が多く含まれており、アーユルヴェーダは漢方のルーツとされています。日本をはじめ世界のインド料理レストランと呼ばれる飲食店で食べることができるのは主に北インド料理です。

 
一方南インドでは米飯が主食で、乳製品よりもココナッツミルクを多用します。香辛料も多くは辛さが強いものです。べジタリアンが多いため肉を使わず野菜を中心とした料理が発達していますが、一方で魚を使った料理も多くあります。米については、北が長粒種のインディカ種を使うのに対し、南のものは丸く、外見はジャポニカ種に近いけれど粘りは少なく、パラパラの状態で出されます。

 
インドで飲み物と言えば、第一にチャイです。チャイはインドでよく飲まれる甘く煮出したミルクティーで、日本でもインド料理店で飲むことができます。チャイは、イギリス植民地時代にインドで作られた紅茶のうち、良品がイギリスに送られた後インドに残ったダストティーと呼ばれる細かいほこりのような紅茶の葉を美味しく飲む方法として作られました。特に北部でよく飲まれ、南部に行くほどコーヒーの方が主流になります。

 
コーヒーも、ミルクを多く入れた甘いコーヒーが一般的です。来日したインド人を喫茶店に連れて行くと、必ずと言っていいほどミルクのおかわりをもらっています。カレーは辛いものが多いのですが、飲み物やお菓子などに関してはインド人は甘いもの好きで、インドでも糖尿病患者が増えています。ちなみに、インドに糖尿病患者は3500万人おり、肥満も増加していて、健康にも敏感なインド人は、一方でカロリーの取りすぎとも戦っています。

 
ただ最近では西欧化の流れで北インドでもコーヒー党が増えており、「バリスタ」などのコーヒーチェーンもいくつか見られるようになってきています。

 

 

アルコールに関しては、経済発展に伴う生活水準の向上や西洋化により、都市部で、ビールを飲む人が増えてきています。一人当たりの年間ビール消費量は、95年の0.5リットルから04年には0.7リットルに増えていますが、国際的にみればまだ低水準です(日本では04年で同じく50リットル強、中国で20リットル強)。それで巨大な人口を考え、将来の成長余力が大きいと言うことで、外国ビールメーカーもインドへの攻勢を強めています。インドのビール業界では、「キングフィッシャー・ビール」を展開するユナイテッド・ブリュワーズが、国内ビール販売シェア40%で首位となっています。今年3月には、日本のキリンが、インドの有力メーカーと提携してインド市場に参入する検討を進めていることが明らかになりました。

 
次回はインド史の8回目で、経済を中心にムガル帝国について示します。

文=土肥克彦(有限会社アイジェイシーauthor

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインド・ダスツール社と協業、オフショア・ソフト開発に携わる。
2004年有限会社アイジェイシーを設立、ダスツール社と提携しながら、各種オフショア開発の受託やコンサルティング、ビジネス・サポート等のサービスで日印間のビジネスの架け橋として活躍している。
また、メールマガジン「インドの今を知る! 一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.119(2008年04月07日発行)」に掲載されたものです。

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