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2008年7月7日

インド人の衣服(社会8)

今回はインド人の衣服について示します。
インドの女性のファッションと言えば、民族衣装であるサリーが思い浮かびます。インドでは、多くの女性がサリーや後述するパンジャビスーツを身にまとっており、米国や日本など海外で働くインド人女性も、ほとんどがサリーを身につけています。しかし最近では、都市部の若い世代に、ジーンズやスカートなどをはいた女性も見かけるようにもなってきています。

 
サリーは、5m×1mほどの布を体に巻きつけた女性用ドレスのことです。サリーは巻き付ける布とブラウス、腰巻き状のペチコートの三点セットで着ます。巻き付ける布は一枚もので、巻き付けた姿が体の中心を起点に布がぐるぐるまわっているところが、輪廻転生などにも見られるヒンドゥー教の時間的・空間的な概念である「繰り返し」の発想からきています。

 
サリーの色や生地、織り方は地域ごとに特色があり、サリーが女性の居住地域を識別する重要な指標となっています。またサリーには普段着用と外出用があって、普段着用は綿でできた比較的安いもの、外出用は絹でできた高価な物です。外出用のサリーは洗濯すると色が落ちてしまうので、めったに洗濯をしません。外出用には金や銀、ビーズ、スパンコールなどさまざまな装飾がほどこされ、その装飾細工の複雑さが、最終的なサリーの値段を左右します。スパンコールやビーズなどで飾られたサリーは手作業で作られます。

 
サリーの端の肩掛けになる部分(パッルー)には特別に細かい模様が施されています。一家の主婦は家じゅうの鍵を束ねてパッルーの端に結び、腰につるしたりしています。またパッルーにお金をくるんで、財布の代わりに使ったりすることもあります。田舎では、年上の男性の前では肩から頭にサリーをかけて、顔を隠すこともよくします。
サリー以外で、インドでよく見かけるのがパンジャビスーツです。

 
サリーは本来結婚した女性が着る衣装ですので、独身女性は通常このパンジャビスーツを着ます。これは、もともとパンジャブ地方の人が着ることが多かったことからの命名です。ただ最近では、特に都市部では、結婚とは無関係に両方を着ていることも多くなっています。しかし田舎では、結婚式がすんでからでないと、サリーを着ることは許されません。サリーを着ることが、女性が一人前になったことの証とみなされているからです。

 
パンジャビスーツは、紐でしばるズボンの上にゆったりしたワンピースを着て、さらに胸のラインを隠すためにドゥパッタというスカーフ状の布を身につけます。ちなみにインドに旅行する女性は、セクハラっぽい目を避けるためにも、体にフィットするものは避けるのが無難だと言われています。

 
この他に結婚披露パーティで花嫁や花嫁の妹などが着る、長い丈の上着、床につくほどの長さのスカート、そして頭にかぶせる長い布からなるラハンガというドレスがあります。
特筆すべきこととして、インドの女性が額の真中につけている丸い印、ビンディーがあります。これはシールになっていて、10枚ほど毎に売られています。このビンディーをつける部分は、インドの命のパワーが宿る大事な部分で、真理を見極めるとされる第三の目のあたりとされています。このビンディーも都会派の若い女性にはあまり好まれず、たとえばジーンズを愛用するような女性たちは決してつけません。
一方インド人男性は、ズボンとシャツというスタイルがほとんどで、ビジネスにおいては普通のスーツを着ます。
この他インド式政治家のスーツという感じの、詰襟ジャケットのシュルワーニーがあります。

 
ところでインド人と聞いてよく連想されるターバンは、着用するのはほとんどがシーク教徒です。シーク教徒は教義によって男性は髪を切らず、ターバンを着用することが義務付けられています。

 
高級ホテルのドアマンなどが、端を羽のように跳ね上げたターバンをしているのは、昔のヒンドゥー王侯のまねで、この他に花婿や儀礼兵など、もっぱらセレモニー用のものです。また多くのインド人は、宝石の指輪をしていますが、これはインド占星術に基づき運気を上げるとされているからです。
次回はインド史の9回目、ムガル後の18世紀のインドについて記します。

文=土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインド・ダスツール社と協業、オフショア・ソフト開発に携わる。
2004年有限会社アイジェイシーを設立、ダスツール社と提携しながら、各種オフショア開発の受託やコンサルティング、ビジネス・サポート等のサービスで日印間のビジネスの架け橋として活躍している。
また、メールマガジン「インドの今を知る! 一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.125(2008年07月07日発行)」に掲載されたものです。

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