シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第3回:世界の水事情とビジネス

Dr.河野の寝耳に水の話

2014年6月2日

第3回:世界の水事情とビジネス

「いや待てよ、では世界の水事情はどうなっているのかな?」
今回はシンガポールから少し離れ、世界に目を向けて、その水事情とビジネスについて触れようと思います。

 

世界の水事情は?

水は全ての生命にとって重要な資源です。地球上には約14億Km3の水がありますが、ほとんどが海水や氷といった利用が難しい水なのです。利用ができる淡水源(河川水や地下水等)は非常に少なく、0.001億Km3です。例えば、500mlペットボトルが世界全体の水だとすると、たった1滴の水(全体の0.01%)を世界中で取り合っていることになります。

 

人間が利用する水の量は、都市化や工業化によって年々増えています。更に世界の人口増加も加わって、取水量は2025年には2000年と比べて約3割増加すると見込まれていて、特に人口増加の著しいアジア地域では、全体の約6割を占めると言われています。

 

ここで問題となるのが「水質汚染」です。下水処理対策の遅れや工場排水の増加、農業での肥料増加による水の富栄養化が進行して、水質汚染が深刻になってきます。特に、成長が著しい中国では水質汚染の問題が大きく、中国環境保護総局の2006年の調査によると、河川の60%が飲料水に適さない水準まで汚染されているそうです。つまり世界的な水事情には「量」と「質」の2つの問題があって、それを解決するために、水資源の有効利用や、下水の再生水、海水淡水化等での新規技術や高効率化が求められているのです。

 

世界の水ビジネス

〜ウォーター・バロン(水男爵)とは〜

では世界の水ビジネスの状況はどうでしょうか。日本の経済産業省の予測では、水ビジネス市場は、2007年の約36兆円規模から、2025年には約87兆円になると報告されています。さらに世界的な人口増加と深刻な水不足で需要が高まり、100兆円規模にまで成長するという試算もあります。

 

その100兆円ビジネスの内訳は▽1兆円:水処理機器(素材、膜)▽10兆円:設計・建設、▽100兆円:運営・管理・サービス――となっています。この巨大なマーケットに君臨する3つの企業があります。ベオリア(仏)、スエズ(仏)、テムズ(英)で、この3社は「ウォーター・バロン」(水男爵)と称されています。

 

3社での水ビジネス事業の売り上げ総額は4兆円を超え、世界で圧倒的なシェアを誇っています。彼らの強いところは施設の設計・構築から運転管理、代金回収、下水処理までをトータルで受託する、まさに100兆円分野を手がけているところにあります。今後の世界の水ビジネスでは、人口の増加や経済発展に伴って、市場が急速に拡大すると見込まれている中国、インド、中東・北アフリカおよび東南アジアの国々が、市場規模と成長率の両面から大きく注目されています。

 

日本の強み・弱みとは?

では日本の強みは何でしょうか?日本企業の強みは、水処理膜の分野をはじめ、超純水製造、ポンプ、配水管等の分野における高い技術力です。耐震技術や漏水防止、下水再生利用等の分野においても高度な技術を有しています。

 

一方で弱みは、日本の水道事業が公共事業として行われてきたため、国内の水企業は海外の入札に必要とされるような管理・運営実績が乏しいことが挙げられます。また自治体の発注に合わせて開発してきた経緯もあって、製品が日本仕様というまさに「ガラパゴス化」していて、国際的な競争力が弱いことも問題点となっています。

 

悔しいですが国内水企業の水ビジネスは、機器・設計・建設までにほとんど留まっているのが現状です。ウォーター・バロンが仕掛けてきている、水市場で最も大きな100兆円分野(運営・管理・サービス)のビジネスエリアへどのように絡んで行けるかが今後の大きな課題です。

 

シンガポール国際水週間(SIWW2014)

さてこれら世界企業の水処理を見ることができる展示会「Singapore International Water Week (SIWW) 2014」がマリーナベイサンズで開催されます(6月1日〜5日:展示会は6月2日〜4日)。前回は2012年に同会場にて開催され、来場者1万9,000人というシンガポールにおける大きなイベントの1つです。世界の水ビジネスの動きを見ることができる2年に1度のイベントです。ビジネス関係者の展示見学は無料ですので、是非お越しいただき、色々と見て感じていただれば幸いです。

 

2013年開催のSIWW Water Utilities Leaders Forumでの意見交換(写真提供:SIWW)

SIWW2014では、シンガポール公営企業庁(PUB)と東芝の共同研究成果も発表されます。SIWW2014ウェブサイト:www.siww.com.sg

文=河野 龍興(こうの・たつおき)

東芝アジア・パシフィック社 水研究センター センター長
東北大学 大学院 環境科学研究科 非常勤講師
博士(工学)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.258(2014年06月02日発行)」に掲載されたものです。

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