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ビジネス特集

2010年5月5日

日本企業の「グローバル戦略」とリーダーに求められるもの(4)

早稲田大学大学院 商学研究科 准教授、サイコム・ブレインズ講師池上重輔氏

二度の英国大学院留学経験と米系、欧州系、日系と様々な国籍、様々な業界の企業の現場での経験を持ち、企業戦略やマーケティングにも詳しい池上重輔氏。日系企業が海外でビジネスを展開する上で、何を見て、何をすべきか――国際経験豊富な氏の視点に迫った。

 

 

池上氏からのアドバイス(1)

学びのすすめ――ロジックの使い方と日本的経営論

p4-1シンガポールはもちろん海外での業務経験を通じて、池上氏が指摘するような課題を認識している読者諸氏は多いことだろう。海外の現場で感じた問題点を伝えて変化へのきっかけにするためには何をすれば良いのだろうか。

 

池上氏は、「まず、ロジカルにものを話す練習をすること」だという。「日本人は起承転結で話しますよね。それを日本の外に行ってもそのままやっている人が意外に多いんです。手順が決まった業務の話などは起承転結で良いんですが、何か新しいことや、変えようと思っていることを起承転結で話すと分かってもらえない。相手に応じて、内容に応じてロジックを使い分けるということを本来海外で学んでいるはずなので、それを日本でもやりましょう、ということですね。もうひとつは、自分の基軸を作ること。そのひとつとして、日本的経営について勉強することをおすすめします。いろんな日本的経営論というのがあるんですが、一般的な日本的経営論って本当は何だろう、ということを探索して、その分析経路の中で自分の会社の位置づけが分かれば、変えるべきことと、変えなくてもいいことが見えてくる。さらに、日本的経営論は世界の中のどこにあるのか、世界はどうなっていて、その中で日本はどうなっていて、自分の会社はこういう位置づけにある、ということを説明できるように、海外にいて多少時間があるうちに是非勉強することをおすすめしたいですね。」日本的経営に関しては既に多くの書籍があるが、「外国人が書いたもの、例えば一番最初に日本的経営論を書いたアベグレンなど外国人の著書を2冊、日本人が書いたものを好きな物で良いので2冊ぐらいは最低読んだ方が良いでしょう」とアドバイスする。

 

池上氏からのアドバイス(2)

異文化間の摩擦の乗り越え方

海外という、日本とは大きく異なる環境の中では、時に異文化間の摩擦が問題になる。個人レベルだけでなく企業としても壁にぶつかる場面は多々あるだろう。池上氏にアドバイスを求めてみたところ、まず、相手が何を前提として持っているのかを考えてみることだという。「相手はなぜこういうことを言うのか、その理由を探ってみることです。摩擦を完全に回避できなくても、お互いに落としどころがわかるようになる。相手だけでなく、自分の側についても、自分達の言っていることはこうだ、なぜならこういう前提だから、ということを相手にきちんと伝えて、互いの前提を踏まえた議論をしようと。そういうスタンスって、意外とみんな持っていないんですよ。それは日本人だけの話ではないんですが」。

 

氏は、日本人は「郷に入っては郷に従え」を実践し過ぎる面があるともいう。「何か問題があると、日本人は自分達の悪いところを直そうとするんですが、相手の問題を解決しなければならないこともあります。合わせ過ぎないで、少し引き戻した方が却ってスムースに行くこともあります」。

 

また、日本人同士で仕事を進める場合、互いに分かり合って仕事をすることが多いため、分かり合えることを大事にする傾向があるが、「異文化同士なんだから、極端な話、分かり合うなんて無理です(笑)。仕事の場合、我々がやるべきことは分かり合うことではなく結果を出すこと。互いの理解が深まらなくても、ある程度割り切ることです。日本の場合は分かり合えることでより良い結果が出ることが多いので、なかなか割り切るのが難しい面もあるんですが。ここで、先ほどの前提という話が出てくる訳です。相手によっては『何で俺たちは分かり合わなきゃいけないんだ?』ときかれることさえある。『いや、分かり合った方が仕事もしやすいから』と言うと『別に分かり合えなくたって結果は出るよ』って言い返される。『だって、求めてる結果はこれだろ?』って言われて、確かにそうだ、と。となると、分かり合おうという部分で自分はすごく苦労していたけど、もしかして必要なかったんだ?ってなる訳です(笑)。もし相手が分かり合いたい、って言うんであれば、よし、分かり合おう、じゃあ今日飲みに行くか?ところで、俺たちは飲みに行くと分かり合えるのか?俺はそうだぞ。お前はどうだ?って、これって、実はロジカルな話をしている訳です。順を追って、ロジカルに自分を表出する練習、しかも笑顔で(笑)。そうやって、論理的に互いの前提をシェアしていくだけでも違うんです。相手とぶつかりそうになったら逃げることもありとする。真正面からぶつかって、分かり合おうと思い詰め過ぎないことです。摩擦は絶対あるんだから、と最初から思って割り切ることも、異文化を持つ相手と仕事を進める上では結構大事だと思います」。

 

池上氏からのアドバイス(3)

グローバルリーダーの視野――可変領域の広げ方

最後に池上氏に、世界の各地域を氏は現在どのような割合で見ているか質問してみたところ、世界を10だとすると、アジアが3、ヨーロッパが3、残りで米国などその他の地域を見ている、とのことだった。向こう3年ぐらいは中国・インドの伸びが大きいが、5年を超えるとおそらくヨーロッパが経済地域としても盛り返してくる可能性が高いと氏は見ており、ヨーロッパは外せないという。日本で海外というと、長らく米国の比重が大きかったが、「米国は放っておいても誰かが情報をもたらしてくれるので、マインドシェアとしては3割、でも時間の使い方として現在は2次情報でも十分」と個人的には考えているという。各地域を自分の中でどの割合で捉えるか、また、自分のエネルギーをどこに対してどの割合で使うのかは、分けて考えるべきだと氏はいう。「両者は近いことも多いんですが、分けて考えることもありうる。そうやっていくと、可変領域も広がっていくと思います」。

 

 

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.165(2010年05月05日発行)」に掲載されたものです。
文=石橋雪江

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