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ビジネスインタビュー

2014年4月21日

魅力的な商品をアジア全域に日本企業の海外進出の助けになりたい

Rakuten Asia Pte. Ltd Singapore e-CommerceDeputy General Manager (EC consultant) 森谷知弘さん

――反応の良かったキャンペーンは。
旧正月前商戦を狙って、「Rakuten」のグランドオープンの時期を設定しました。
それもあってか、グランドオープン直後に開催した送料無料キャンペーンは、驚くほど反応がよかったです。ご好評につき、現在でも延長しているくらいです。
しかし、休暇中には出かけてしまう人が多いのか、思ったほど買い物をする人の数は増えなかった。そこで、後日使える10Sドルのクーポン券発行にキャンペーンを切り替え、会員数を増やすことに注力しました。実際、休暇後にはさらに売り上げが急増したので臨機応変に対応してよかったと考えています。また、外出する人が多くて売り上げが落ち込む金曜日の夜にも、お得な「ワンナイトクーポン」などを発行しているのも好評です。

 

――当地のネット通販市場は日本と違いますか。
私の感覚では、2003年〜2004年ごろの日本の雰囲気とよく似ていると感じました。インターネットは普及したけれど、ネット通販はまだ特別なものというイメージ。ただ、スマートフォンやタブレット普及率がすでに日本以上なので、急速な勢いで広がっています。
魅力的な商品をそろえて、サイトを作りこみ、キャンペーンを開催するときちんと反応がある。日本で培ったノウハウをきちんと仕掛けていけば、手ごたえが非常に大きいです。後発ではありますが、ネット通販市場が定着していく時期の中では、「Rakuten」は中核になれると思っています。

 

――日本の企業の出店にどんな困難がありましたか。
質が高い、面白い、美味しい、日本の商品は当地でも人気です。ただ、多くの日本企業は、英語が苦手。「Rakuten」に出店して現地の人々に販売しようとした時に、商品紹介が困難という壁がありました。そこで、これまでの出店企業の販売サポートをさらに強化して、翻訳まで請け負いました。また、日本から空輸する商品も送料をすべて一律にし、お客様にわかりやすくしました。これは、各国での展開の中でも全く新しい取り組みでした。海外進出を目指す日本の企業の方々は多いですが、シンガポールにオフィスを構え、リサーチして営業をして、というのは手間も費用もかかって難しい。「Rakuten」への出店は、日本の企業の方にとっても海外進出しやすい仕組みになっています。

 

――楽天市場のアジア展開にとってシンガポールの位置づけは。
アジアでは現在、台湾、インドネシア、マレーシア、タイでサイトを運営しています。2012年にシンガポールにできたこのオフィスも、アジアのヘッドクォーターとして全域の管理を支援する役割です。ですが、日本の商品をこれほどまで多数取り揃えているのはシンガポールが初めて。2月にシンガポール国外からの注文も受けることができるようになり、実際にマレーシアなどから利用があります。シンガポールには、周辺諸国から買い物に来る人々もいる。こうしたニーズを取り込み、今後は、東南アジア全域からの注文を受けられるように範囲を拡大していきたいと計画しています。シンガポールをハブとしてアジア各国のお客様を取り込み、ブランド認知を高めていきたいですね。そのために足元で改善すべき点は物流の問題。仕組みを変えて、もっと届けるスピードと質をアップさせます。

 

――今後の展望・目標を教えてください。
ある日本の出店企業が商品と一緒に「Thank you」と手書きした付箋を入れたら、ローカルのお客様が大変に喜ばれ「感激した」と言われた、という出来事がありました。また、商品が届かないという苦情があり、私たちが直接商品をお届けした時も大変驚かれました。高品質、接客レベルが高い、時間通りに届ける、というのは「おもてなし」という日本文化の一つ。小さいことかもしれませんが、競争力になると思います。シンガポールでも水・電気・ガス・Rakutenと言われるほど、生活に欠かせない存在になりたい。アジアのお客様の生活を豊かに、そして日本の企業の海外進出のお手伝いをして、日本を活気づける力になりたいと思っています。

 

 

「楽天市場」シンガポール版のサイト

森谷 知弘(もりや ともひろ)

北海道旭川市出身。「低迷する地元企業の力になりたい」と2002年に楽天株式会社に入社。「楽天市場」出店企業の販売をサポートするECコンサルタント業務などを担当した後、中国進出や国外在住者向けの通販サイト「Rakuten Global Market」運営などの業務を経て、2013年9月から在星。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.255(2014年04月21日発行)」に掲載されたものです。
取材=石澤 由梨子

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