シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第1回 ぬるま湯=日系企業というブランドを払拭せよ

危うし!日系企業の常識・非常識

2019年10月25日

第1回 ぬるま湯=日系企業というブランドを払拭せよ

グローバル人事・組織開発のプロが斬る! 次世代のアジア地域における、これからの強い日系企業とは?

 勤務先としての日系企業。シンガポールで人気はあるでしょうか?シンガポールの大学生向けに実施された米国の調査会社ユニバーサム社による就職人気企業ランキング100位の中で、日系企業は何社入っていると思いますか?
 
 以前、日本語を学ぶシンガポール人大学生、約100人向けたワークショップを実施した際に、日系企業への就職したいかどうかを聞いたところ、ほとんどの人が日系企業への就職を希望しないと答えました。日本語を勉強しているのにも関わらず、です。理由は「残業が多い」「日本人が優遇される」「お酒を強要される」「出世が遅い」など。極め付けだったのが「過労死」というキーワードが挙がりました。
 
残念ながら、アジアにおける日系企業への就職神話は、工場ワーカーは別として、すでに過去の話。上昇志向のあるホワイトカラーからは敬遠されているのが実情です。特にシンガポールにおいてはそれが顕著で、日系企業は「それほど頑張らなくても給与が年々上がる」「クビになることはほとんどない」という噂が広まっています。それが故に、多くの場合が安定志向、ぬるま湯志向の人たちが、日系企業を志望する残念な傾向にあるのです。
 
 駐在員から「シンガポール人は、仕事が残っていても、定時が来ると帰ってしまう。責任感がない。やる気が感じられない」という話をよくお聞きしますが、それは、シンガポール人全体の話ではなく「うちの会社で働いているシンガポール人は、責任感がない」という話として考えないと、ミスリードしてしまいます。
 
 難しいチャレンジングな仕事や業務量が多いものは、日本人がなんとかしてくれるという考えの人がいるのも事実。長い間働いているシンガポール人の中には、そうやって今の会社に長く居座ろうとする傾向がなきにしもあらずです。もちろん、これはステレオタイプ的に全員がこうだと言っているのではなく、会社によって違いはあります。ともかく、それほど頑張らなくても年々給与が上がる日系企業は、彼らにとっては「美味しい」職場なのです。
 
 さて、冒頭のシンガポールの大学生の就職人気企業ランキング調査ですが、文系商学部、工学部専攻の学生共に、日系企業で100 位以内にランキングしているのは、ユニクロ社とソニー社のわずか2社。
 
 この2社の共通点は、外国籍社員の登用に積極的で、人種に関係なく、比較的透明性の高い評価がなされ、キャリアパス、活躍のフィールドがあるとシンガポール人から見えていることです。
 
 その一方で多くの日系企業の人事システムは、全般的に時代遅れと認識されてしまっています。小手先で高い給与で釣って優秀な人を採用したとしても、直ぐに辞めてしまうでしょう。日本の旧来的な人事の仕組みから、優秀でやる気のある人が集まる仕組みに変えていかなければなりません。
 

Universum 社調査 
シンガポール大学生(商学部)の就職人気企業
ランキング2019Universum社調査
シンガポール大学生(商学部)の就職人気企業
ランキング2019

 
 
 

著者プロフィール
beyond global グループ President & CEO
森田 英一(もりた えいいち)

大阪大学大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュアにて人・組織のコンサルティングに従事。その後シェイク社、beyond global社を創業。日系企業のグローバル化支援事業を手掛ける。社員の主体性やリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発ファシリテーションに定評がある。日本全国6万人の人事キーパーソンが選ぶ「HRアワード2013」(主催:日本の人事部 後援:厚生労働省)の教育・研修部門で最優秀賞受賞。主な著作「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「会社を変える組織開発」(PHP新書)など。日経スペシャル「ガイアの夜明け」「とくダネ!」などメディア出演多数。シンガポール在住。シンガポール在住。
 
人と組織の可能性を拓く beyond global グループ(シンガポール・タイ・日本)

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.351(2019年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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