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ビジネス特集

2008年1月14日

マレーシア経済・政治・社会――2008年の展望

KLCCでのカウントダウンに派手な花火、ビールで乾杯で明けた2008年だが、今年はマレーシアにとってどのような年になるのだろうか?2007年の軌跡を追いながら、来る年を考えてみたい。

 

2007年は輸出が伸び悩む中、経済成長を内需がけん引するという状況が鮮明化し、内需拡大・景気対策に力が注がれた格好だが、NCERとECERといった大規模開発計画、2009年度予算案では貧困の撲滅に特に力が注がれていることが注目される。またマレーシア航空やテナガ・ナショナルといった政府系企業(GLC)の再建は徐々に成果を挙げてきており、最大の懸案だったプロトンも7~9月期で黒字転換。勢いづいて外資との提携交渉も取り止め、自力更生の道を選ぶことになった。

 

アブドラ政権が掲げてきた汚職追放も着々と進んでいるようで、会計監査報告では自治体のずさんな財務管理が明るみになるなど、膿を出す作業が続けられている。他方では公共サービスの効率性が改善しているという喜ばしい報告もなされた。

 

こうした中、ヒンドゥー教徒による大規模なデモは、マレーシアが内包する民族問題の取扱いの危うさを改めて露呈した。穏健派とみられていたアブドラ首相だが、治安維持・国内の秩序を優先するあまりデモ・集会を厳しく取り締まり、国内治安維持法を使ってまで政府批判・異論を封じ込めようとしたのは、内外から驚きをもって受けとめられた。風刺画や国歌パロディ、ブログ事件などでもみられるように言論統制を厳しくし、人権を抑圧する方向に向かっている感を強くさせ、華人やインド人などマイノリティの間で懸念を拡大することになったのはマイナスだった。米紙が論じたように、異論・批判を正面からぶつけあうことを、言論を弾圧してまで避けなければならないほどマレーシアの民主主義が成熟していないのか、問い直す段階に来ている。

 

しかしながら、マレーシア経済は着々と成長しており、1月2日にDBS銀行が発表した今年第1四半期(1~3月)の経済予測によると、昨年に引き続き、本年度も堅固な成長を保つサービス業界がマレーシア経済を牽引するとし、2008年の国内総生産(GDP)成長率は昨年の6%を上回る6.2%になるとしている。DBS銀行エコノミスト、アーヴィン・シア氏が語ったところによると、昨年の経済成長は国内消費の増加が大きく貢献しているとし、その原因として観光客の増加、政府の不動産投資規制の緩和、労働賃金の値上げ措置があげられると説明した。また同氏は、2008年経済の注視すべき点として、米国住宅ローン焦げ付き問題に伴うクレジット危機により発生する投資リスクと、農産物・原油価格の高騰によるインフレーションを指摘している。しかしながら国内経済の基盤は揺らぐことはなく、成長が続くだろうと予想している。

 

また、政界、財界の見解としては、財務相も兼任しているアブドラ首相は、政府が充分な予備資金と強い経済基盤を整えており、世界経済の負の影響に直面する準備ができていると強調。中央銀行バンク・ネガラも、米国、日本、シンガポール、香港などの主な貿易・投資相手国との関係を詳細に分析するシステムを構築していることを強調している。中銀のゼティ総裁は、短期的には好況は保たれるとしたが、中期的には米国経済の停滞が世界的に影響を及ぼすだろうとし、石油価格高騰と相まって不確定な状況になるとしている。しかし同総裁は、国内経済は全体として好調な成長を続けると予測している。

 

ノル・モハメド第2財務相は、懸念されている石油価格の高騰について、経済にプラスとマイナスの両方からの影響があると分析。石油輸出国として、バレル当りの価格が1米ドル上がれば、2億5,000万リンギの増益となるが、その一方で国内消費分に政府が高額の補助金を負担しなければならないマイナスが生じると指摘した上で、全体的に見るとまだプラスに働いているとしている。

盗撮セックスDVDの男性は自分であると認めたチュア・ソイレック保険相が辞任に追い込まれるという波乱で幕開けした2008年ではあるが、アブドラ政権は盤石であり、政治、経済ともに安定して推移するだろう。

A1505, Damansara Intan, e-Business Park No.1 Jalan SS20/27, 47400 Petaling Jaya Selangor D.E. Malaysia

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.114(2008年01月14日発行)」に掲載されたものです。
文=アジアインフォネット 田辺 太嘉昭

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