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法律相談

2019年7月25日

Q.シンガポールのIR規制について

Q : 昨年7月、日本でいわゆるIR整備法が成立し、話題となりました。シンガポールでは、マリーナベイ地区やセントーサ地区のカジノ施設を中心とするIRが、観光収入の増加に寄与しており、観光産業の起爆剤として機能しています。シンガポールにおける、IRに関する規制の大枠や、ギャンブル依存対策を教えて下さい。

 
A : ―IRとは? ―IRとは、Integrated Resort の略称であり、レストランやショッピングセンターなどのレジャー施設や会議場などのビジネス施設といった、様々な商業機能を有する施設とカジノ施設が一体となった複合的施設の総称をいいます。
 
 シンガポールのカジノに関する代表的な法令には、カジノ管理法および管理規則があります。カジノ管理法は、カジノ産業の構造や運用などの大枠を規定しており、管理規則は、カジノ事業者のライセンス取得手続や入場料の取得など、カジノ管理法の運用の詳細を規定しています。
 
 更に、カジノ運営にあたり実 務上特に注 意すべきものとして、カジノ規制庁(Casino Regulatory Authority)が定める各種規則があります。これらの規則には、マネーロンダリングやギャンブル依存症などの具体的問題への対策構築義務や、広告に関する規制など、重要な規則が数多く規定されています。
 
 加えて、カジノ関連犯罪についても、政府は厳重な取り締まりを行なっています。シンガポールにおけるカジノ犯罪には、カジノチップや貴重品の窃盗、遊戯中の詐欺などがあります。個人の犯罪が多く摘発されており、組織的犯罪は比較的少ない傾向にあります。具体的な取り締まりは、カジノ犯罪調査局(Casino Crime Investigation Branch)という名称のシンガポール警察特別犯罪部が行なっています。
 

Q : 日本では、ギャンブル依存のリスクから、IR導入について反対の声が挙がっています。シンガポールではどのような対策が取られているのでしょうか?

 
A : シンガポールでは、主としてカジノ規制庁が、カジノ施設への立入りを制限する様々な措置を取っています。例えば、シンガポール国民および永住者に対し、カジノ入場料(100SGD/回または2,000SGD/年)を徴収する制度は有名です。また、国家賭 博問題協議 会(National Council on
Problem Gambling)は、頻繁にカジノ施設に入場する者であって、かつ金銭的に問題があると判断された者に対し、入場を制限する裁量を有しています。
 
 政府主体の規制以外にも、ギャンブルに起因するリスクを負いたくない人は、自らまたは家族による申請により、カジノ施設への入場や入場回数を事前に制限することが可能です。外国人もこの制度を利用することが可能です。同協議会は24時間体制で電話相談サービスも提供しており、ギャンブルに関する様々な相談を受け付けています。

取材協力=ケルビン・チア・パートナーシップ法律事務所 菅谷 伸夫

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.348(2019年8月1日発行)」に掲載されたものです。

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