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経営者コラム 社長の横顔

2019年6月25日

第1回 カルロス・ゴーン

 歴史を動かした経営者たち。彼らは何を考え、私たちに語ってきたか――。彼らと同じ時代を生きたジャーナリストが独自の視点で選ぶ、世を動かした「格言」の数々を紹介する。
 
 カルロス・ゴーンと言えば、かつての日産自動車を再生復活させた立役者だ。
 今や日産自動車の会社資金の不正流用の疑いで逮捕され、悲しいかな公判を待つ容疑者の身分。そんな彼も日産再建の途上では数々の「語録」を残している。その一つは『リーダーシップは自分自身で作り上げるもので、最初からあるものではない。経験を通して学ぶことが重要だ』。
 次のように言葉を続けている。
 『リーダーシップは自分で作り上げるものであって受け継ぐものではない。そこで経験が必要となるのです。経験があれば、物事がどのように動くかを理解することができますし、もっと重要なことは、経験することで間違いからも学ぶことができるのです。仕事の優先順位が分かるのです』 
 こんな言葉もある。
 『今は皆さんの多くが望んでいる変化のための分岐点です。私たちは成功のために皆さんを必要としている』
 着任早々、2000年度黒字化のコミットメントとして日産社内を鼓舞するための叱咤激励した時の言葉だ。当時の日産は、赤字転落から黒字経営を果たすための重要な場面だった。
 また、このコミットメント(必達目標)という言葉。ゴーン元社長により、世間に広く認知されるようになる。達成されなければ自らの進退問題につながると豪語し、大ナタをふるったのだ。
 『2000 年度黒字化のコミットメントは、日産リバイバル・プランの中でも最も困難なものと言えます。しかし私たちがこのコミットメントを達成することができたら、より容易に他のコミットメントを実現するための弾みがつくと私は考えます。別の言い方をすれば、この最初のコミットメントを達成しなければ、日産復活はあり得ないということです』
 この短いスピーチの中でまさに 4 回も繰り返された ” コミットメント”。このリフレインで、世は彼を信じた。
 この分岐点を乗り越えて黒字に転じることができたならば、日産全従業員にとって良い成功報酬を約束することが可能であり、社員個人の成果にも十分な報酬を与えると約束した。『アメとムチ』を兼ね備えた経営戦略だ。即ち、彼は人心を操る言葉の魔術師でもあったのだ。
 現在は収監された東京拘置所から仮保釈されているゴーン元社長。本人は中東の友人達を介しての日産の会社資金不正流用を否定し、秋ごろに予想される第 1 回公判に備えている。

経済ジャーナリスト 
小宮 和行(こみや かずゆき)

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