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法律相談

2019年5月25日

Q.外国人メイドを雇用する際に 注意すべき法的ポイント

Q : 近々外国人のメイドを雇おうと考えています。しかし、外国人メイドを雇用してトラブルに巻き込まれたという話もよく聞きます。実際にメイドを雇用する際に注意すべき点や罰則等を教えてください。

 
A : シンガポールでは、日本人駐在員の家庭を含め、住み込みの外国人メイドを雇う家庭が多く見られます。2018年12月の段階で、シンガポールでは約25万4000人の外国人メイドが働いています。外国人メイドのサポートは生活を楽にしてくれる一方、雇用主の家族が生活習慣や文化の違う外国人メイドと生活を共にすることから、トラブルも生じやすくなっています。例えば、外国人メイドが雇用主から虐待を受けたり、反対に外国人メイドが雇用主の家族(特に幼児や高齢者)に虐待をする例も毎年報告されています。
 
 まず、雇用主が加害者、外国人メイドが被害者となる場合の規制を見ていきましょう。シンガポール政府は、外国人メイドが安心して働ける環境作りのため、様々な施策を打ち出しています。中でも、外国人メイドへの虐待やセクシャルハラスメントに関しては、非常に厳格な措置が取られています。外国人メイドへの虐待やセクシャルハラスメントを疑わせる通報があった場合、警察は、通報があった全ての案件を精査し、厳格な対応を取るという声明を発表しています。
 
 雇用主が住み込みの外国人メイドに対して暴行、傷害、監禁またはわいせつ行為をした場合、刑法は最大で通常の法定刑の1.5倍の刑を科すこととしているほか、有罪判決が確定した場合、政府は、雇用主およびその家族に対して、外国人メイドの雇用を禁止することがあります。加えて、外国人である日本人駐在員は、有罪判決が下された場合、シンガポール国外への強制退去となる可能性があります。このような重い制裁があり得ることを踏まえて、メイドに対する不適切な対応を慎むようにしなければなりません。
 

Q :反対に、外国人メイドが悪事を働かないかも心配

 
A :一方、雇用主に賠償金を支払わせたり、嫌がらせをすることを目的として、外国人メイドがありもしない事実を警察に吹聴したり、話を誇張して通報するなどの事案も散見されます。仮に外国人メイドが虚偽の事実に基づいて通報をした場合、初動を間違えると、警察が通報内容を真実と受け止めて、パスポートの没収や逮捕・勾留といった事態に発展するおそれもあります。外国人メイドが虚偽の通報をした場合は、直ちに通報内容が虚偽であることを示すため、警察の捜査に協力し、事実関係を丁寧に説明することが望ましいでしょう。また、メイドが不慮の事故で怪我を負った場合には、事故の記録を残しておき、万が一メイドが雇用主から暴行を受けて怪我をしたと主張した場合に備えたり、自宅に監視カメラを設置することを検討するのも一案です。
 

Q :外国人メイドを雇う際、その他に気をつけるべきことはありますか?

 
A :2019年1月以降、雇用主が外国人メイドの財産を預かる行為は、仮に当該外国人メイドの同意や要請がある場合であっても禁止になりました。外国人メイドの給料を雇用主が管理することや、外国人メイドの通帳または銀行カードを預かることも禁止の対象とされています。
 
 また、ビザに記載された住所以外の場所で外国人メイドを働かせること(幼児や高齢者の世話をする為に必要な範囲であれば適法です)、外国人メイドに家事業務以外の仕事を行わせること(例:家庭教師など)も禁止されています。
 
 雇用主がこれらの規定に違反した場合、最大1万Sドル(約80万円)の罰金を科され、政府は、雇用主およびその家族に対して、外国人メイドの雇用を禁止することがあります。日本人駐在員が違反をした場合、前述の場合と同じく、シンガポール国外への強制退去となる可能性があるため、最大限注意を払う必要があります。

取材協力=ケルビン・チア・パートナーシップ法律事務所 菅谷 伸夫

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.346(2019年6月1日発行)」に掲載されたものです。

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