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AI時代に飛躍する経営

2019年4月25日

第5回  AI普及の先にある 「すでに起こった未来」

 これまで、AI 時代に飛躍し続けるために求められるマネジメントがどのようなものか、そして残念ながら従来型のマネジメントは機能せず、AI に敗れざるを得ないことをお伝えしてきました。
 

 今回は、このまま現在と同じ経営パラダイム・資本主義パラダイムに基づいて経済活動が行われた場合、どのような未来が待ち受けているか予測したいと思います。
 

 このままほとんどの企業が人の「氣」や「状態」に注目することなく、マネジメントを行った場合、AI はあらゆる場面で人間の優位に立つことになってしまいます。そのため、企業の競争力の源泉は「どれだけ競争力のある AI をその企業が持っているか」という勝負になってきます。
 

 すでにお伝えしたように、AI の基盤にあるのは、ビッグデータとディープラーニングの2つの技術であり、AI の強みは、「大量の知識・経験則」を集積し、「最適な解」を超高速で導き出す力にあります。
 

 したがってAI の競争力は、乱暴に言ってしまえば、いかに大量のビッグデータを早く先に集めるか、いかに AI を早く賢くするかにかかってくるので、完全に「早いもの勝ち」です。
 

 それゆえ、ビッグデータは「21世紀の石油」と言われ、全ての儲けを「総取り」しようと、GAFA(Google, Apple, Facebook,Amazon)が莫大な開発費をかけてその取得に取り組んでいるわけです。
 

 一方で、日本人を含む全世界の国民は、毎日毎分毎秒、この「21世紀の石油」をGAFAに貢いでいるわけですが、もしAI の未来が、この方向だけで進むならば、GAFA以外の企業は全て存在しなくなるでしょう。あるいは、全ての企業は GAFAの「おこぼれ」しかもらえなくなるでしょう(すでにその様相を呈していますが)。
 

 なぜならば、「過去の知識・経験則」に基づく「最適な解」とは、それを提供するところが 1つあれば十分であり、差別化要因はせいぜい価格くらいしかなくなります。となると、あとは過当競争化が進み、体力のある大企業が総取りする結果になるだけです。そしてその先に突き当たるのは、経済社会全体の「成長の限界」です。
 

 極端な見解だと思われるかもしれませんが、日本や世界の経済社会は、すでにこの停滞、もっと言えば破綻を経験してきています。
 

 つまり、高度成長のような市場が未成熟な時代においては、モノは作れば売れるが、市場の成熟にも関わらず新たなイノベーションが生まれなかった結果、過当競争が進み、多くの企業が淘汰(とうた)される。過当競争を勝ち残っても、イノベーションがなければそれ以上モノは売れず、無理にでも利益を創出するために無理やりな商品が作られ、無理やりにでも売られる。
 

 そんな無理やりな経済の暴走が限界を迎えて破綻したのが、あのリーマンショックです。
 

 AI は、従来あった人間の生産性の限界を取り払い、爆発的な生産性を生み出していくでしょう。それはイコール市場変化のスピードであり、そのまま、市場が限界に達するスピードと規模に比例します。暴走すれば、リーマンショックの比ではない経済破綻が起こりうる可能性すらあります。
 

 限られた紙面ゆえに、議論の粗さを感じられる方もあるかもしれませんが、これが、私の考える AI 普及の先にある「すでに起こった未来」のシナリオです。
 

 あなたは、このような未来を望まれるでしょうか?もしそうではないならば、AI 以前に経営のあり方、もっと言えば人間の生き方そのものを変える必要があります。
 

 そしてその変化を遂げることができたならば、きっとよりよい未来が待っていると私は信じています。次回、その輝かしい未来をどのようにして手に入れるかについてお伝えします。

 

プロフィール
鳥内 浩一

 15年以上に渡り、経営者・マーケッターとして現場で活動しながら、100業種300社以上のクライアントに対してコンサルティングを行い、関わる全てを幸せにする “十方よしの経営学” 『日本発新資本主義経営』を広めている。規模の大小・業種業態を問わず、業績向上へと導く手腕に定評がある。著書に「売れる仕掛け」「逆説の仕事術」「『コラボ』の教科書」。

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