シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第11回 仮想通貨投資で聞くICOって何?

仮想通貨入門講座

2018年12月30日

第11回 仮想通貨投資で聞くICOって何?

 これまでの連載にて、仮想通貨について身につけておきたい基本的な知識はある程度お伝えしましたが、今回は『ICO』というものの仕組みについてお話しします。
 ICOは昨年から、投資をする上でビットコインやイーサリアム等のメジャー通貨以上に稼げる!といわれています。ICOが利益を享受しやすいという事自体は否定も肯定もできないのですが、ICOの仕組みがどういうものなのかを皆さんにお伝えした上で、投資するのであれば「どのような選定基準を持つべきなのか」をお話したいと思います。

 

ICOとはそもそも、どういうものなのか?

 ICOとはInitial Coin Offeringの略語で、企業が“仮想通貨で資金調達する”ために仮想通貨の取引所に独自通貨を上場することです。
 株式投資をしている方であればIPO(新規公開株)をご存知だと思いますが、IPOが株式で取引所に上場することであるのに対し、ICOは仮想通貨で取引所に上場することになります。
 どちらも企業が資金調達するための有効な手段という点は同じですが、多くの違いがあるので、比較しつつ確認しましょう。

 

 

 伝統的な資金調達手段であるIPOは法整備が確立しており、条件が厳格に定められています。国によって多少ルールは異なりますが、創業から上場するまで最低3年程度は必要であること、基準以上の時価総額、ガバナンスの整備が必要であることなどが厳格に定められていることもあります。投資家側としては安心感が高い一方、企業側としては資金調達する上で機動性が低いというデメリットがあります。
 企業がICOを行うメリットとしては以下が挙げられます。

 

・株式よりも上場基準が少ないので、容易に資金調達が可能
・株式よりも短期間で実施可能
・自社の仮想通貨を発行することで、ブロックチェーン技術を利用した仕組みを構築可能

 

 ICOという仕組み自体が新しい概念であるため、今後整備が進み厳格化していく可能性が高いのですが、現状、企業はブロックチェーン技術を用いたセキュリティ、送金スピードなどのメリットを取り入れることもでき、かつホワイトペーパーのような事業計画書があれば、まだ売上がなくても資金調達ができるというのも大きなメリットです。

 

 それぞれのプロジェクトが革新的な仕組みを用いたものなので、資金調達が上手く進み、実際に開発されたプロダクトが世の中に広まると、投資家も大きな価格上昇が享受できるため、莫大な利益をもたらす可能性があります。その最たる例がイーサリアム(ETH)で、元々ICOで調達した資金でプロダクトとして開発されたものが、ICOプラットフォーム、スマートコントラクトなど多くの用途で利用され始めたことで、一時はICO投資額の数百倍にまで時価総額が膨れ上がりました。

 

 一方で、ICOの法整備が確立されていない分、詐欺に用いられていることも多いのが事実です。最初から持ち逃げする前提で架空のプロジェクトをでっち上げ、資金が集まった時点で消息を絶つ、あるいは、とりあえず上場まではするものの最初からプロダクトを開発する気などなく、上場した時点で全部通貨を売ってしまい、そのまま頓挫する、といった話もよく聞きます。

 

 ビットコインなども含め、仮想通貨自体がインターネットの黎明期のような期待感と不安感が織り混ざった状態ですので、今後適切な法整備が行われる事で健全化していくものと考えられます。ただし、確立した後では大きな利益を生み出しにくくなります。そこで今から目利きを行い、少額からでも投資を行うことができれば、大きな資産を築ける可能性を秘めています。とはいえ、投資に値する良いプロジェクトなのか、詐欺のような悪いプロジェクトなのかを見分ける事は、非常に困難であることも事実です。

 

 これまで募集されたICOの8割が詐欺に近い案件といわれており、これらのICO案件は資金回収が不能、または現在の仮想通貨の相場状況も影響している点もありますが、資金回収できたとしても投資金額に対して、微々たる価格となってしまっています。

 

 なお、法整備によるICO申請の厳格化により、詐欺案件の比率は低くなっていく見通しはあります。現状でも、良いICO案件というのは確実に存在しますし、価格が低調な現段階であるからこそ、有望なICOプロジェクトへ投資する事は、大きな成長が期待できると思われます。

 

 次回は、実際にICO投資を行う上で、どのような判断基準をもって選定すべきか、私なりの良いICOと悪いICOのプロジェクトの見分け方をお話しします。

著者プロフィール
三方 麻琴
M&R Partners Ptd. Ltd.
マネージングダイレクター
鹿児島県出身。株式会社サイバーエージェントFXの法務・コンプライアンス担当を経て、2009年3月に独立。独自で資産運用・トレーディングを学び、ファンド会社運営などを経て、現在は、アメリカ株式、日本株式、FX、CFDの自己勘定トレーディングを行っている。また、資産運用・トレーディングの知識および情報の普及にも力を注ぐ。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.341(2019年1月1日発行)」に掲載されたものです。

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