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ビジネスインタビュー

2011年4月4日

社会インフラ事業を高信頼の電源製品でバックアップ

SANYO DENKI SINGAPORE PTE LTD ジェネラルマネージャー 辻村哲也さん

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日本有数の電気機器メーカーの山洋電気株式会社の販売子会社である SANYO DENKI SINGAPORE PTE LTDが2006年にシンガポールで設立されてから5年。当地で立ち上げ業務から携わり、事業を軌道にのせるまでを手がけたジェネラルマネジャーの辻村哲也氏にインタビューした。

 

日本の「安心」と「信頼」を世界に提供する電気機器メーカーへ

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山洋電気シンガポールでは、シンガポールを拠点として 、東南アジアを始め、インド、オーストラリア向けに ジェネレータ、PVインバータ、無停電電源装置(UPS)、サーボシステム、 ステッピングシステム、冷却ファンなどの電気機器を販売している。それぞれ比較的専門的な機器であるため、普段、我々が直接目にすることは少ないものの、さまざまな 地域での交通システム、通信インフラ、プラントなど社会基盤を支える開発事業に欠かせない製品だ。

 

例えば、無停電電源装置は、 電気の供給が不安定で停電などが起こりやすい地域で、突然の停電などが置きた時に瞬時にそれを察知し、生産ラインなどに支障の無い様、安定した電気を供給する役目を果たす。

 

日本や先進諸国の多くと違い、社会的なインフラ設備が不十分な地域も多い新興国においては電力の供給等が不安定になることがあり、生産拠点としての役割を担いながらもその生産効率を下げ、製品の質にも大いに影響を及ぼしてしまうことがある。特に精密機器などを使用している際は、データの損失などに関わるのでなおさらだ。インドのように計画停電があったり、ベトナム、タイ、インドネシアなど工場への設備投資が盛んな地域では停電の長さが予想できない事があるので、無停電電源装置と合わせて、エンジンジェネレーターで電気を発電できる装置も補完しておくことも多い。

 

「電力の供給が不安定な新興国でも、 物づくりにおける、高性能、高信頼性という質へのこだわりをもつ 日系企業の生産工場などを中心に、我々が日本で培った技術を生かした製品を提供しています」と、辻村氏はこれまでの実績を挙げた。

 

その他、 次世代のエネルギーとして注目されている太陽光発電システムの導入が世界の各都市で拡大されている中、山洋電気のPVインバータは、太陽電池により発電された直流電力を交流電力に変換して電力を供給する装置として、その高性能ぶりが認められている。「我々の製品は、世の中に送り出される製品が作られる工場や、社会基盤を支える様々なシステムや施設に使用されます。末端の利用者に製品やサービスが迅速かつ途切れずに届くことで、顧客満足に貢献しているのです。」と語った。

 

さらに、「弊社は、まず日本において、自社技術の装置の高性能を証明し、高い信頼を得る事で、マーケットと共に成長してきました。特に2000年以降、生産拠点がますますアジアへシフトしていく流れにそって、我々も中国、東南アジアへとビジネスを拡大してきました。国内外において、我々の製品、サービスの質を落とさず提供する事を常に心がけています」とした上で、次へのステップはシンガポール以外の地域へサービスを提供する際に、いかに迅速に対応できるかが課題だと付け加えた。そのためには、東南アジア内で拠点を増やす事も視野に入れて、今後の経営計画を練っている。

 

 

自社の「強み」を現地で発揮するための方向転換

シンガポール支社を設立以来、思いも寄らない苦労もあった。「弊社には、顧客が必要なものを、ニーズに合わせて製品化できるという強みがあり、日本国内では、それを要に成長してきました。ただし、製品をカスタマイズするので値段が既製品より高くなり、納入するまでの時間が長くなるという点で、その強みがこちらの環境では十分に生かせないとわかったんです」と辻村氏はいう。

 

その結論に至るまでの道のりも決して平坦ではなかった。強みだからこそ、プライドもあり、ローカル社員から「それでは売れない」といわれながらも、カスタマイズ製品を売り込むことに注力した時期もあった。「営業に行き詰まりを感じた時、一度その強みへのこだわりを止めて、ニュートラルな考え方にギアを入れ直し、方向性を変えてみたんです。顧客や同僚の声に自分を合わせてみようと。

 

カタログにある製品をストレートに売り込むことをやってみたんです」と当時を振り返る。また、「顧客の声は様々です。同じカタログ販売をするにしても、製品選定をするとき、製品の多様性という別の強みを生かして、顧客の必要なスペックに合わせて最適な製品をカタログから推奨したり、製品を組み合わせてパッケージにするという付加価値のサービスを提供しています。また、短いリードタイムを実現するため、こちらでよく利用される製品については在庫も用意しました」と説明しながら、「未だに腑に落ちないこともありますが、以前よりも注文を頂く数が増えています」と笑う。

 

辻村氏には、東南アジア・オセアニア地区で、ブランドの認知を高め、販路を広げるという使命がある。思い切った方向転換が功を奏してか、目標値には届いていないものの、確実に数字が伸びている。とはいえ、世界のニーズを形にしていくというカスタマイズの強みを捨てている訳ではない。「東南アジアは、多方面からの投資を受けて各国企業が入り乱れており、それぞれ違うアプローチがあります。当地にあったやり方を積み重ねて行く一方で、弊社の強みは武器として使い分けて、大きなビジネスに繋げていければ、と考えています」と抱負を語った。

「没我帰一(ぼつがきいつ)」

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辻村氏の座右の銘は、「没我帰一」。自己中心的な考え方を捨てて、一つにまとまることを 意味するという。「『没我』は、自分をなくす、または否定することではありませ ん。 個人はあくまで組織の目標を達成するための一部分の役割を果たす存在として私心(利己心)を捨て、周りとの関係を重視し相手を認め、寛大に受け入れ、 それぞれ役目が違っていても、最終的には一丸となって組織の同じ目標に向かって前に進んで行きましょうというものです。 相手が困っていれば助け、共に前進します。 情報伝達手段が変化したとはいえ、最終的には目標を共 有 して行動をともにしなければ組織にとって良い結果は出ません」と説明した。

 

現在、組織の拡大を目指す上で、ローカル社員のリーダーを育成している。「少なくと も その方々には、このような考え方に立って勇気ある行動を取って いただ けたら」と語る。また、会社での活動を通して人材育成に寄与したいと考えている辻村氏は、 ローカル社員とのコミュニケーションに関して、「相手をリスペクト(尊敬)する事が大事だと思います。それが日本語であっても、みなさんには空気で伝わるものです。特にアジアでは、その感覚が強い様に思います。自分のこれまでの失敗も踏まえて、絶えずリスペクトする様にしています。自分は日本からきた外国人として、ここに住ませてもらっているという気持ちを忘れないようにしています」と語った。

 

初の海外赴任としてシンガポールに来てから、より日本を意識する様になったという辻村氏。顧客との会話で、日本の文化について上手く伝えられない歯がゆい思いを経験して以来、近代史、戦争についてなど、日本を学べる本を読むようになった。「海外生活が長くなってきた子供にも、日本のことをしっかり学ばせたいので、自分が何を教えてあげられるかもよく考えます」という父親の顔がふと覗いた。

 

SANYO DENKI SINGAPORE PTE LTD
10 Hoe Chiang Road #14-03A/04 Keppel Towers 089315
TEL:6223-1071

10 Hoe Chiang Road Keppel Towers Singapore 089315

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.186(2011年04月04日発行)」に掲載されたものです。
取材=桑島千春

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