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座談会

2018年11月27日

シンガポールのこの一年を振り返る 2019年の日系企業の展望は!?

概ね好調な企業業績 背景は東南ア経済の拡大

AsiaX:シンガポールの景況感については、どう感じていますか。

 

清水:JCCIが会員企業に実施しているアンケート結果からは、順調という回答が大勢を占めています。今年から来年にかけてさらに売上、利益が伸びていくという期待が昨年と比べて高まっています。シンガポール国内で売上増が続くとは思えませんが、ASEAN全体の経済が拡大を続けているので、シンガポールに置いた統括拠点の業績は比較的好調な企業が多いのだと思います。

 

斯波:私の実感は、可もなく不可もなくといったところです。シンガポールのビジネスはおのずと国際的な景気の影響を大きく受けますが、保護主義や国と国との対立など国際間の緊張の高まりによって不安定要素も出てきていると思います。

 

石井:1、2年前に出ていた成長率見通しよりは下がっていますが、ドーンと落ちることはなく、ほぼ前年並みに堅調な推移を見せています。この先も2~3%の成長を続けると思います。
 米中貿易摩擦については、現状、日系企業から具体的な影響があるとの声は限定的です。
 とはいえ、サプライチェーン上、中国との結び付きが深いエレクトロニクス分野などでは影響を受ける可能性があります。シンガポール金融管理庁(MAS)が10月末に発表した報告書でも、今後、じわじわと影響が出る可能性が指摘されており、貿易摩擦長期化に備えるべきとの声は多くあります。

 

 

拡大続けるEコマース市場 JETROはレッドマートと提携

AsiaX:一方、ECによってシンガポール国内はもちろん、越境取引も活発化しています。

 

丸茂:本当にECマーケットの動きを感じた一年だったと思います。数年前に楽天が撤退しましたが、あれは何だったのかと思うほどです。

 

石井:ECはますます伸びると見ています。シンガポールでは共働き世帯が多く、買い物に行く時間が少ないので、食品から日用品まで全て買えるECはとても便利です。カタログを見ていると「これも良いな」と思わず買ってしまうこともあります。実店舗で買い物するのに比べ財布の紐は緩くなって、消費経済には貢献するかもしれませんね。
 日本からの輸出を促進するのも、JETROの役割の一つですが、実店舗販売の場合、買い取りが少なく売れ残ると引き取らないとならないケースがほとんどです。これだと、日本の輸出メーカーにとっては大きな負担になります。その点、JETROが11月からECサイト「レッドマート」に設置するジャパンモール“Japan Hyper Fest”では買取りがあり、新たな取り組みとして注力していきます。レッドマートでは、例えば届いた卵割れていたりしても、電話をすればすぐに対応してくれますし、買い付けも丁寧にやっていると感じています。提携先は今後も広げていく予定です。

 

斯波:輸送コストや食品の賞味期限などの問題があると思いますが、ECの場合、商品の在庫管理などはどのように行っているのでしょうか。

 

石井:注文が入り次第、商品を送っていきますので、日本に比べ長めの消費期限の物が求められますが実店舗で販売する場合に比べてフレキシブルかと思います。

 

厳しくなるコンプライアンス 2019年は改正労働法施行

AsiaX:EC以外に目立った動き、相談内容など挙げていただけますか。

 

石井:日本から商品を売りたい、進出したいという相談は引き続き多いです。逆に、シンガポールから日本への投資案件、例えば北海道のリゾートを買いたいというような動きもあります。
 日本政府はスタートアップ支援に本腰を入れ始めました。JETROでもその海外展開を促進しています。シンガポール事務所に現在ASEAN唯一のスタートアップ支援拠点を置いていますので、関連の相談が寄せられたり、視察についての問い合わせなどが増えています。JETROとしては、スタートアップ企業と当地に拠点を置く投資家や大企業を結びつけたり、またそうしたきっかけを通してさらに日本に投資してもらうことも目指して取り組んでいるところです。

 

清水:JCCIの入会動向としては、既に進出している企業をサポートするするサービス分野企業の入会が継続して一定数を占めています。シンガポールに拠点を持つ日系企業の厚みが増すことは各社にとっても心強いのではないでしょうか。

 

丸茂:労務関係の相談は、業種は年々変化していますが、引き続き多いです。加えて、コンプライアンスに絡む案件が増えました。日系による現地企業買収は続いていますが、なかなか日本人のトップではうまくいかないことも多いです。近年、当社が受けている案件の傾向からは、少し今後を心配しています。

 

斯波:当社では取締役の名義貸しサービスを提供していますが、サービスを提供するクライアントの中には監査が終了せず、期限までに定時株主総会を開催できないといった会社があり、その結果、名義取締役が会社法に違反したとして取締役不適格者として扱われ、他のクライアントも含めお引き受けしていた全ての会社の取締役を辞任しなければならないという出来事がありました。実際にこのような法令違反で処罰されるのはごく一部の会社ですが、ACRA(シンガポール会計企業規制庁)だけでなくIRAS(シンガポール内国歳入庁)も法令違反による罰則規定の適用を年々厳格化しています。当社でも、リスクの高まりを受けて、今後は名義貸しなどのサービスについて見直すことになるかもしれません。

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