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日系ゼネコンが手掛けた名建築 in シンガポール

2018年10月31日

第5回 キャピタ・グリーン

竣工:2014年 設計:伊東豊雄建築設計事務所/ 施工:竹中工務店

同じ建物でも通りから見える印象と、遠方から見える印象が大きく異なるものがある。オフィスタワーのキャピタ・グリーンもその一つで、CBD界隈を闊歩していると畝った列柱と土壁が目立つロビー階に、緑とガラスのリズムが面白いタワー部が見え、遠方からだとタワー部と最上階にある赤が際立つ特異な形状の彫刻的なオブジェが見える。この意匠のコンセプトは「木」であり、ロビー階は木の根と地面、タワー部は茎と葉、最上階のオブジェは花を表現している。それらは同時に環境に対応したデザインとしても機能している。東西からの強い光と熱を遮るように配置された緑化空間、ガラスの外装はダブルスキンで熱を遮断し、最上階のオブジェは「クールヴォイド」と呼ばれおり、上層部の新鮮で冷えた空気を建物内に取り入れる構想だ。

 

この建物も他の最新建造物と同様にBIMが多用されている。特に屋上階のオブジェは複雑な形状のため、3D曲面のデザインを立体ソフト「ライノセラス」+「グラスホッパー」で効率化し、それをBIM上で解析するというプロセスを経て、オブジェの厚さを減らし、結果軽量化に成功している。オブジェの面を構成するアルミニウム折板は、はぜ葺き仕上げで、パネルの分割パターンも立体ソフトで検討された。地階の根のような列柱(非構造体)は世界的なアーティストのオラファー・エリアソンがドイツで作成しており、BIM上で細かな配置を検討している。BIMの導入により、データが立体的に視覚化され、統合された結果、現場のミスが減り、複雑な形の解析も短時間で正確に行う事が可能となった。それらが評価され、この作品はシンガポールのBCA(建築業管理庁)が2015年に行った「BIMアワード」で最優秀の「プラチナ賞」を受賞している。

 

著者プロフィール

 

藤堂 高直(とうどう・たかなお)
1983年東京生まれ。15歳の時の渡英する。
2008年にロンドンの名門建築大学AAスクールを卒業。
同年に英国王立建築協会パート2資格を取得。卒業後はロンドン、ミュンヘン、パリ、東京と建築設計に携わる。
2012年に渡星、現在はDPアーキテクツに所属。
スペインのログロニョで行われた設計競技に優勝。
シンガポールでこれまでに手掛けてきたのは、ゲンティン・ホテルやオーチャード・ロードのインターナショナルビル改装など。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.339(2018年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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