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アジアおもしろクルマ事情(フィリピン編)

2018年11月1日

ジプニーとトライシクル

 

フィリピンで庶民の足となっている乗り合いバスの『ジムニー』と3輪タクシーの『トライシクル』。便利で安価な乗り物も老朽化し、環境汚染や安全性の問題も多く、政府が掲げる公共機関の近代化政策の中でその存在が揺れ動いています。

 

ジプニーとトライシクル

フィリピンの首都マニラには電車などの公共機関があって、タクシーや配車アプリと併用すれば我々旅行者やビジネスマンにとっても便利で嬉しい移動手段です。しかしながら、やはり地元に住んでいる庶民の足は安くて便利な乗り合いバスの『ジプニー』や3輪車タクシーの『トライシクル』。
『ジプニー』とはもともと第二次世界大戦後、米軍から払い下げられたトラックを乗合バスに改造したもの。現在は主としていすゞ製の中古ディーゼルエンジンにあちこちからかき集めた大物部品で構成されたアンダーボディに、フィリピン製ステンレスボディを載せ造られています。色鮮やかな派手なペイントの外観はまさに“手作りの傑作品”という趣です。手を挙げればどこでも停まってくれて、降りる場所も自由。各ジプニーには大まかな行き先が書かれているのですが、多少の寄り道はオッケーという乗り物です。
また、『トライシクル』はバイクの片側に乗車席を付け全体を強化プラスティックなどで囲った乗り物。基本はバイクなので決して快適な乗り心地ではないのですが、乗客は雨にも濡れず、大きな荷物も屋根に積むことができるという極めて理想的な乗り物なのです。

 

 

政府の公共機関近代化政策

しかしながら、この便利な乗り物は排気ガス規制や安全基準もなく、また乗客確保のための乱暴な運転スタイルや縦横無尽の駐停車は交通渋滞の元凶とも言われていました。都市部のメイン道路を排気ガスを撒き散らしながら大手を振って走る派手なジプニーの姿は、近代国家としてもふさわしくないとの意見もあって遂に規制がかかり始めました。フィリピン全土を走っているジプニーで15年を経過したものはスクラップ、新車両は欧州排ガス規制(EURO4)に適応、2020年には新規車両は電動化かガソリンのみに限定する内容です。政府の政策に呼応し既に大手メーカーや改造業者が排気ガス対策車や電気ジプニーを発売しています。

 

 

運行ビジネスの担い手は個人

このジプニー、オーナーは政府ではなく一般の個人。オーナーは運転手や車掌を雇い、運転手は決められた使用料を日銭で支払うという方式で運営されています。雇われ運転手は一日のオーナーへの支払い分を稼がないと赤字。それ以上稼いだ分は自分の取り分となる。運転が荒っぽくなるのはそのせいと言えます。老朽車から環境対策車への買い替え促進には政府からの補助金が出るのですが、オーナーの金銭勘定ではまだYESと言えるレベルには程遠く、政府の買い替え施策は進んでいないのが現状のようです。
また雨が多くて未舗装路道路も多いフィリピン。電動車のようなデリケートな車はまだまだ使用環境上信頼性に欠けるとの印象が強いのです。ディーゼルエンジンはメンテが簡単で壊れてもその場で直せるというメリットが大きいというのもスクラップが進まない理由です。
『トライシクル』も同様に、電動化計画が既に立ち上がっており、こちらは世界銀行の融資を受けて、日本企業が既に千台以上を生産しているのですが、買い替えたいオーナーがいない為に頓挫している状態。ジプニーも計画倒れとなる可能性が高いのではと言われています。

 

鉄道など大量輸送手段やルートバスは、政府が予算を投入して作り上げるのですが、タクシーのような中近距離輸送やドアツードアの公共輸送手段は既得権を持った個人や企業が担っているのが東南アジア各国の都市交通の実態。フィリピン同様、インドネシアのバジャイやベモ、タイのトゥクトゥクなど、利便性の高い移動手段を確保しながらも交通環境問題の改善やビジネスとしての成立性、既存の運転手の雇用対策など各国とも色々と悩みが多いようです。

プロフィール

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藤井 真治(ふじい しんじ)

(株)APスターコンサルティング
アジア企業戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー

自動車メーカーの広報部門、海外部門、新規事業部門経験30年以上。インドネシア/香港現地法人トップとして海外での企業マネジメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業を支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応えます。『現地現物現実』を重視し、クライアントと一緒に汗をかくことがポリシー。
Website: www.ap-star.jp  E-mail: fujii258@gmail.com

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.339(2018年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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