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ビジネスインタビュー

2011年3月7日

世界最高峰のビールをシンガポールに届ける

サントリー酒類株式会社 ビール事業部部長 足立真一さん

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「ファンが増えていること」――2003年の発売開始以来、出荷量が毎年2桁ベースで伸びているサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」。日本では発泡酒や第三のビールの台頭で本来のビールが苦戦している中、価格もプレミアムなビールであるザ・プレミアム・モルツがなぜ快進撃を続けているのか、その理由を尋ねた時に足立氏が上げたのがまず冒頭の答えだった。

 

日本では国内産ビールだけでなく海外産ビールも多数市場にあふれる中で、ザ・プレミアム・モルツはわずか7年あまりで着実に消費者の心を捉えてきた。「最初は小さく始めたものだったんです。武蔵野ビール工場に近い多摩地区限定での発売でした。それが、お店の方がファンになり、そのお店の方に勧められて飲んだお客様がまたファンになって、と徐々にベースが広がっていったのです。」

 

比較的新しい商品であるザ・プレミアム・モルツだが、実はその開発の歴史は30年ほど前にまで遡る。「世界で最高峰のビールを日本で作りたいという開発者の熱意と、長年の研究の積み重ねによって作り上げられたものなんです」と足立氏は明かす。

 

世界最高峰を目指して開発したからにはと、食品分野での世界的なコンテストであるモンドセレクションに出品、2005年から2007年まで3年連続で最高金賞を受賞した(中瓶で受賞)。モンドセレクションでは専門家や評論家が味はもちろん原材料の品質や衛生なども厳しく審査するといわれており、最高金賞を得るには100点満点中90点以上でなければならない。ザ・プレミアム・モルツは、30年前に目指した「世界最高峰のビール」に文字通りなったといえる。

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日本で作った最高のおいしさを海外へ

日本国内で多くのファンに支持されたザ・プレミアム・モルツは、2010年から本格的に海外展開を開始、まずアメリカと韓国で販売された。まだ1年ほどだが、現地での反応は良好だという。2011年1月からは、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムで本格展開し、今後さらなる国々へ販路を拡大する予定だ。「まず、環太平洋の主要都市で展開を図ります。各国の市場は、日本の市場とは当然違いがありますが、お客様にまずはお店でザ・プレミアム・モルツを体験して頂くことが大事だと思っています。飲んで頂けばそのおいしさはきっとわかって頂ける。そして、試して頂いたお客様に今度はリピートして頂けるようにしたいですね。」

 

シンガポールは日本食のレベルが高く、アジアにおける日本食のハブでもあると捉える足立氏は、東南アジアでザ・プレミアム・モルツを展開する上でもシンガポールは重要な拠点のひとつと考えている。その拠点の責任者として今後の展開に対する期待を「ザ・プレミアム・モルツがシンガポールでどう受け止められるのか、楽しみですね」と控えめに語るが、商品に対する自信には並々ならぬものがある。「日本でNo.1のプレミアム・ビールとして、日本と同じ品質のビールをシンガポールでもお届けします。そのためにも鮮度は重要。鮮度管理には非常に力を入れています。」

 

日本から遠く5,000キロ以上離れた、しかも年間を通して日中の気温が30度前後と高いシンガポールへ品質を損なうことなく商品を運ぶことは、いくら輸送技術が進歩しているとはいえやはり簡単なことではない。工場での徹底した管理で作り上げられた最高品質のビールを、信頼できるディストリビュータの手で輸送してもらい、販売する店舗側にもザ・プレミアム・モルツの商品特性や取り扱い方法などをきちんと理解してもらって、最高の状態でザ・プレミアム・モルツを客の手元に届ける。それで初めて同社が目指す「世界最高峰のビールをシンガポールにも届ける」ことになる訳だ。「日本からはリーファーコンテナ(定温コンテナ)を使って運んでいきます。新鮮な状態でお届けできるよう、また余剰在庫が出ないように輸入数量もコントロールしています。」保存期間にも目を光らせ、消費者の手元にできるだけ新鮮なビールが届くよう徹底していくという。

 

「我々が商品を語れなければ、伝わらない」

店舗に対してはセミナーなどを開催して、ザ・プレミアム・モルツに対する理解を深め、常においしく飲める状態で提供してもらえるよう努めていくという。「国によって味の好みや味覚も異なります。その土地のしきたりや文化を我々も理解し、地元の人達にザ・プレミアム・モルツのことをしっかり伝えることが大事です。我々がきちんと商品を語れなければならない。表現の仕方にも工夫が必要です」と海外経験豊富な氏らしく、自分たちから情報を伝えていくことの重要性を強調する。

 

今年からシンガポールに来たばかりだが、今後自らもレストランのシェフや関係者と幅広く交流し、多くの声を聞いていくつもりだ。ザ・プレミアム・モルツは世界最高峰のビールであると自負し、その味わいは他の追随を許さないとの自信を持ちつつも、「皆さんが実際に飲んでみて感じたことをそのまま聞きたいんです。それをフィードバックして、さらに良いものを作りたいですから。」ザ・プレミアム・モルツは、これまでだけでなく、これからも世界最高峰を追求していく、そんな心意気が足立氏のことばからも伝わってくる。

 

豊富な海外経験を生かし、シンガポール市場へ切り込む

オーストラリア赴任時にはメルボルンやシドニーで同社直営の日本食レストランの支配人を務め、アメリカではニューヨークに駐在してウイスキーやリキュールの販売に携わり、日本産のシングルモルト「山崎」のプロモーションも手がけるなど、足立氏はこれまでにも様々な経験を海外で積んできた。商品の開発・製造に携わるメーカーとしての立場だけでなく、店舗として商品を見る立場も理解できるのが氏の強みだ。

 

今回のシンガポールへの本格参入にあたっては、地元メディアとのインタビューに流暢な英語で応じていた。飲食業界関係者やメディア関係者を集めて行われた試飲会でも、英語で説明を行った後、ザ・プレミアム・モルツを実際にグラスに注いで、ビールと泡の割合が7対3になる「おいしい注ぎ方」を実演してみせた。足立氏のいう「商品について我々がきちんと語る」を早くも実践してみせた格好だ。

 

シンガポールに来たのは今回約10年ぶり。その著しい成長ぶりに非常に驚いたという。新天地で気持ちも新たに、「これから立ち上げていくところで確実にザ・プレミアム・モルツのファンを得て、評判を高めていきたいですね。サントリーの技術力を強みにして頑張ります」と強い意欲を見せた。

 

これからザ・プレミアム・モルツがシンガポールの消費者にどのように届けられて、ファンがどのように増えていくのか、今後の展開が楽しみだ。

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.184(2011年03月07日発行)」に掲載されたものです。
取材=石橋雪江

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