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アジアおもしろクルマ事情(フィリピン編)

2018年9月30日

トヨタと三菱

 

政治、経済とも不安定な時代が続き『アジアの病人』と言われていたフィリピンですが、今やその言葉は過去のもの。ドゥテルテ大統領のもと安定した経済成長を続けています。
その成長の恩恵を受けクルマの販売もここ数年大変好調で、市場規模は今や自動車先進国であるマレーシアに迫る勢いです。人口1億700万人(2018年4月現在)、平均年齢24歳のフィリピン。自動車ビジネスは今後も膨らんでいくことが大いに期待できます。

 

マレーシアに迫る市場規模

アセアン諸国で一番大きな自動車市場はインドネシアで年間107万台。次いでタイの87万台。第3位はすでに国民2人に1人がクルマを持っている自動車普及先進国のマレーシアで58万台、そのマレーシアを急追しているのがフィリピンです。ここ数年の伸びは著しく、昨年は、マレーシアとの市場規模差が10万台にまで縮まっています。外国からの出稼ぎ送金や好調なサービス業に支えられた経済成長に加え、ドゥテルテ大統領のインフラ整備政策がクルマの購入にプラスに作用していると考えられます。本年2018年に入って物品税のアップで市場は足踏み状態ですが、右肩上がりの成長トレンドが続くと見られています。

 

 

やはりトヨタがダントツ

大都市マニラの道路には乗合バスのジプニーや3輪車タクシーのトライシクルが我が物顔で走っています。しかしながら、プライベートカーとしてはここでもトヨタバッジをつけたモデルが目立ちます。それもそのはず、年間の新車市場におけるトヨタのシェアは何と38.5%で年間販売台数は18万台。トヨタシェアはタイやインドネシアよりも大きいのです。おそらく主要国ではトヨタシェア世界一ではないでしょうか?豊富な商品ラインアップに加え、不安定なビジネス環境下でも諦めず 国産化推進や販売/サービス網に40年以上に渡って力を注いできた事業の歴史の成果と言えるでしょう。

 

頑張る三菱

 

他のブランドを引き離すダントツのトヨタですが、2位はシェア15%、7万台の三菱です。トヨタと同じくフィリピン事業の歴史が長く市場の信頼を勝ち取っています。タフイメージを武器に、SUV(スポーツユーティリティビークル)やピックアップトラックのファンが多いのが特徴です。インドネシアからの輸入が始まった7人乗りの MPV(マルチパーパスビーグル)のエクスパンダーも高い前評判を取っています。頑張る三菱をホンダ、日産、フォード、スズキ、現代が一桁台のシェアでしのぎを削っています。日本の日産本体は三菱の筆頭株主でアジア地区での協業が期待されているのですが、商品戦略面についての具体策は今のところ見えていません。

 

第3メーカーには悩ましい政府の自動車政策

東南アジア全体の自動車製造に目を向けてみますと、これまで各メーカーは市場の大きいタイやインドネシアを地域の戦略拠点と位置づけ、生産体制を強化してきました。現在この両国は、国内向けだけでなくアセアン域内や中近東、日本への輸出拠点にまで成長しています。一方、市場規模の小さいフィリピンはタイやインドネシアで生産された完成車を輸入するか、両国から大部分の部品を輸入しクルマを組み立てているのが現状です。アセアン域内の関税自由化によりどの国で作っても域内の関税がゼロになるのならば、生産拠点は全てインドネシアとタイに集約したいというのが、各メーカーの本音かもしれません。

 

このままではフィリピンの自動車産業が滅んでしまう。そういう危機感がずっとあったのですが、フィリピン政府は2015年にようやくその対策として『自動車再生プログラム(CARS)』という国産化推進政策を発表しました。一定の生産台数と投資条件を満たしたメーカーに税制恩典をつけるというものです。トップと2位メーカーのトヨタと三菱がいち早く手を挙げ、すでに対象車種の小型セダンの生産を開始しました。しかしながら第3のメーカーが出てきません。やはり、市場拡大への不安があり、販売実績のないメーカーは恩典の条件である販売台数の達成に自信が持てないことが理由なのでしょう。

 

フィリピン事業への思い入れも販売実績もあるトヨタと三菱。合わせて50%以上の新車シェアはさらに拡大していくかもしれません。

プロフィール

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藤井 真治(ふじい しんじ)

(株)APスターコンサルティング
アジア企業戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー

自動車メーカーの広報部門、海外部門、新規事業部門経験30年以上。インドネシア/香港現地法人トップとして海外での企業マネジメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業を支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応えます。『現地現物現実』を重視し、クライアントと一緒に汗をかくことがポリシー。
Website: www.ap-star.jp  E-mail: fujii258@gmail.com

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.338(2018年10月1日発行)」に掲載されたものです。

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