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アジアおもしろクルマ事情(タイ編)

2018年8月31日

『なんでもあり』がエネルギー源の 中古車ビジネス

 

中古車市場のオモシロさ

 

タイで昨年販売された新車は87万台。ようやく持ち直したとはいえ、ピークだった2013年の140万台に対して約半分というレベル。一時は2位インドネシアに大きく差をつけるASEANナンバーワンの自動車市場で、中近東向けなど輸出も合わせて200万台以上の生産台数を誇り、『アジアのデトロイト』と言われた時代もあったのですが、今は少し色あせた感があります。
ただし、これは新車ビジネスの世界のことで、中古車ビジネスはこれまでにない活況を呈しています。
メーカーが厳選した正規販売店による新車ビジネスとは異なり、中古車ビジネスは参入のハードルの低い、誰でも参入可能なビジネスです。メーカーの生産によってのみ市場投入される新車に比べると、中古車はあらゆる場所から出現するからです。手元資金ゼロでも情報だけで仕事ができるのです。新車ユーザーや中古車ユーザーの買い替えによって発生するクルマ、ローンを払えなくなったユーザーから引き上げられたクルマ、契約期間の切れた長期リースのクルマ、修理を諦めた事故車。さらには日本から流入する中古車やマレーシアなどから入ってくる密輸車両など、その素性は様々です。

 

新車販売店に設けられた中古車展示場

 

発生する中古車を巡って

 

様々な要因で発生する中古車は中古車業社の商売のネタ。その 『玉』を巡って様々なビジネスが展開されます。2012年から13年に爆発的に売れた新車が代替え期間に入り、4~5年落ちの高付加価値の中古車が大量に出現中で、中古車ビジネスに関わる人たちの目の色が変わってきました。ただし彼らが自前で大量の売り玉を仕入れることは難しく、売り玉の供給元としてここ10年で急激に拡大した中古車オークションが益々重要な役割を任っています。

 

オークション会場は日本の一昔前の景色

 

バンコクには日系、ローカル系といった大手をはじめ、大小様々な中古車オークション会社がたくさんあり、毎週あちこちでオークションが開かれています。車を持ち込むのはローン会社やリース会社、個人ユーザーや業者など中古車の持ち主。買い手は中古車販売店やブローカーで、それぞれのクルマに最高値をつけた者が車を買い取れるという仕組みです。
ある大手中古車オークションを訪問してみると、会場の屋外には所狭しと中古車が並べられていて、その数はざっと300台。展示車は会場中央部のバイヤーの集まる建物に順番に入っていき、出て行くまでに一番高値をつけたバイヤーのものとなります。会場は200人くらいのバイヤーでごった返しており、できるだけ高く売れそうな良い『玉』やお値打ち『玉』の仕入れを巡って会場は熱気と殺気であふれています。日本でのオートオークションはすでにIT化が進んでおり、バイヤーは端末で情報を見ながら入札。一台当たりわずか30秒でセリが終了してしまうのですが、タイはいわゆる『手ぜり』。魚河岸のセリにも似た光景が広がっています。また静かで上品な新車の販売店とも違う別の世界がここにあるようです。

 

中古車オークション会場

 

様々な中古車流通

 

 こうして仕入れられたクルマのエンドユーザーへの販売方式は、年式や程度によって実に様々。比較的年式が新しく、状態の良いクルマは新車ディーラーや独立系の中古車専売店できちんと展示販売されているのですが、年式の古いクルマなどはガレージのような場所で販売されているのが現状。車歴情報も怪しく、メーターの巻き戻しもあると言います。こうした中古車専売店は『テント』と呼ばれており、現在のタイの中古車小売業のメインプレイヤーですが、その実態は様々といって良いでしょう。店舗を持たない売買や個人間での売買も多く、中古車流通の近代化はこれからの課題といえるでしょう。一方、最近は中古車の情報サイトもあり、IT化の波の中でジワジワとプレゼンスをあげているようです。
 インドネシアやフィリピンと違い、隣国とは地続きのタイ。中古車や中古部品はミャンマーやラオスなどに輸出されるほか、マレーシアで販売された新車が盗難にあってタイに流入するといった現象が起こっていて、いわゆる『なんでもあり』感が増しているようです。適度な秩序のなさがエネルギーの源というのもアジアならでは自動車ビジネスかもしれませんね。

 

マレーシアブランド・プロトンの中古車

プロフィール

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藤井 真治(ふじい しんじ)

(株)APスターコンサルティング
アジア企業戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー

自動車メーカーの広報部門、海外部門、新規事業部門経験30年以上。インドネシア/香港現地法人トップとして海外での企業マネジメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業を支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応えます。『現地現物現実』を重視し、クライアントと一緒に汗をかくことがポリシー。
Website: www.ap-star.jp  E-mail: fujii258@gmail.com

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.337(2018年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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