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2018年8月29日

世界最高のサービスで外国人利用者拡大目指す 日本航空、SKYTRAX「5スター」を獲得

日本航空 アジア・オセアニア地区支配人 畠山 隆久 氏

日本航空が、英SKYTRAX社の2018年「ワールド・エアライン・アワード」で最高ランクの「5スター」を獲得した。座席シートなどハード面、機内食や機内エンターテインメント、空港ラウンジなど改善を続けてきたことが評価された。外国人利用者には十分浸透していない面もあった同社サービスだが、今後は世界最高品質を前面に打ち出し、周知拡大を図りながら、外国人利用者のビジネス需要取り込みを強化していく。同社の畠山隆久アジア・オセアニア地区支配人に、「5スター」獲得までの道のりや今後の東南アジア戦略などを聞いた。

 

 

日本航空のシンガポール~東京線は今年就航60週年を迎えました。所感をお聞かせください。

シンガポール~東京線はJALにとって5番目に長い歴史を持つ国際線です。今年は建国53周年ですから就航開始はシンガポール建国前のことですし、私自身も生まれる前のことです。シンガポールは古くから貿易、商船の重要拠点であり、日本航空も日系企業の進出に合わせて香港、バンコク、シンガポールへと路線を延伸してきた歴史があります。お客様あっての60周年であり、お客様はもちろん、これまで支えていただいた関係者の方々に感謝しております。

 

4月にシンガポールに赴任されました。これまでのシンガポールとの関わりを聞かせてください。

入社3年目、名古屋支店勤務時代に名古屋~シンガポール線(当時・週2便)の営業も担当しており、何度か観光開発のために訪れたことがありました。その頃以来ですが、当時は観光という意味で主だったものといえばマーライオンくらいしかなく、開発されたベイエリアもなく、一種のリゾート地という記憶でした。

 

現在、シンガポール~日本線は各航空会社が多くの便を飛ばしています。

東京(羽田・成田)発着だけでも日本航空が3便、全日空が4便。シンガポール航空は5便で、12月から1便増やします。合計13便で非常な激戦になっています。他に大阪、福岡、名古屋発着もありますから、シンガポール~日本線はデイリーで計20便近くなります。また、デイリーではありませんが広島、沖縄等への地方便も就航しており、経由便を含めると更に増えます。日本と東南アジアを結ぶゲートウェイとして、シンガポールを経由して次の都市に行くという利用者の取り込みも含めて、各社間で競っています。シンガポールだけでなく、広いエリアを捉えながら、より利便性を高めるために取り組んでいます。

 

近年は、東南アジアから日本への旅行者が増えています。その効果は表れていますか?

海外から日本への利用者数は、毎年二桁増で大きく伸びています。一方で、当社が提供できる座席数にも限りがあるので、一般的なトレンドに沿ってお客様を取り込めているかと言えば、残念ながらそういうことではありません。

 

少し便数を増やしても需要の伸びに対応できるということですか。

対応できる部分はあると思っています。ただ、首都圏の発着枠の制約などとの絡みもあるので、どこを優先していくかは今後の課題ですね。2020年に首都圏の発着枠を拡大する国の動きもあり、それらも踏まえて、戦略的にどの路線・地域に注力していくべきか検討を続けてまいります。

 

需要に応じて自社運航便を増やしていくのも一つの方法ですが、提携他社とコードシェアなどをするという戦略もあります。いずれにしてもお客様の利便性を高めていくことが、ポイントだと思っています。

 

日本航空の東南アジア戦略を聞かせてください。

日本航空はフルサービスの航空会社ですから、シンガポール線であれば競争相手は全日空とシンガポール航空。東南アジアという広いくくりで見ると、フラッグシップキャリアであるマレーシア航空、タイ国際航空、ガルーダインドネシア航空、フィリピン航空などもライバルです。各社とどう競争していくかは、我々の戦略のなかで、どうしても考えなければなりません。

 

一方で、例えばマレーシア航空は同じアライアンスのワンワールドに入っています。マレーシア航空に乗ってもJALのマイルが貯まるし、乗継便につなげておけばお客様はJAL便に乗るのと同じように予約・発券ができます。その意味でお客様は共通、共有している部分があります。パートナーシップを強化して、よりお客様に選んでいただける航空会社群になっていけば、我々自身も潤ってくることもあるので、アライアンスパートナーとも協調しながら、お客様を一緒に囲い込んでいくという戦略をとっています。

 

また最近は、特定の航空会社との関係はコードシェア、アライアンスより更に関係の深い包括協定へと進化しており、より緊密になってきています。例えば、アジアとアメリカを結ぶ路線の中で、我々のパートナーにアメリカン航空があります。共同事業をすることによって、互いにダイヤ調整を行い、予約コントロールや運賃について調整していますし、共通のサービスを提供しています。営業活動でも協力しており、シンガポールから北米に向かわれるお客様を取り込んでいくため「日本航空とアメリカン航空合わせてこれだけの便数・ネットワークがあります」と、共同で東京経由北米行きのプロモーションも行っています。

 

日本航空は現在、日本と各国の主要拠点を結ぶネットワークを持っていますが、アメリカ、ヨーロッパ、アジアと拠点が広がっていく中で、自社ですべてをやりきるというのは非効率であり、相当難しいことだと思います。そこを補完するのが他社とのパートナーシップです。相手の強み、相手からすれば我々の強みをうまく利用しあって、お客様を囲い込むという感じですね。

 

現在、共同事業はアメリカとヨーロッパではうまく軌道に乗っていますので、今後も同じような形態で提携関係を深化できるような航空会社があれば、進めていきたいと思っています。

 

東南アジアはLCCも発達しています。いかがですか?

日本航空とLCCでは サービスも運賃も異なります。そのなかでどう差別化していくかですが、マーケットにしっかりと根付いて、サービスを強化しながら、お客様にアピールしていきたいと思っています。

 

現在、日本国内と日本発短距離国際線については、ジェットスター・ジャパンに出資を行い、LCC需要に対応しています。また、2020年の上期には中長距離国際線をターゲットとした新航空会社を就航させることも企画しています。中距離線では日本を起点とする東南アジア便も有力な候補になってきますので、競争に勝ち抜くために、どの路線への展開が適切なのか、本社部門とともに検討を進めています。

 

サービス面では、先日、スカイトラックスの5スターを獲得しました。

日本航空は日本で生まれて日本で育った航空会社です。お客様の多くが日本人であり、日本人のお客様が満足されるサービスを構築してきたという絶対の自負はありました。

 

一方で、インバウンドで日本へのお客様がどんどん増えてきており、海外のお客様にどれだけ利用いただけるかが成長の鍵となる中で、2017~2020年にかけての中期経営計画でも、売上構成を日本:海外の比率を将来的には50:50にすることを掲げています。しかし、海外の方々へのアンケート調査では、日本航空の名前は知っているが、乗った経験もないし、サービス内容も知らないという回答も少なくなく、日本航空のサービスを世界的に認知いただく必要がありました。5スター獲得はその認知度を上げるための一つの手段でしたが、なにより海外のお客様に喜ばれる商品・サービスを実現するため、開発計画を立て、実行し続けてきたわけです。

 

具体的には、サービス内容をどのように変えたのですか?

サービスの基軸は、航空機内のハードです。2012年以降、すべてのクラスにおける座席の全面改修を行い、ワンクラス上の世界最高品質の商品にしました。過去、2010年の経営破綻以前においては、必要な投資が行えず、客室の改修のタイミングが遅れるなど悪循環に陥っていました。その当時は、世界の最先端をいく商品だったかといえば、違っていたと思います。

 

その後、破綻をきっかけに変わり、様々な努力を続けてきました。例えば、ビジネスクラスには全席通路アクセス可能なフルフラットシートを、エコノミークラスには足元が広く薄型でゆったりお座りいただける座席(スカイワイダー)を開発して提供を始めました。横幅についても、ボーイング787型機は一列に9席入れるのが一般的ですが、我々は8席しか入れていません。その分広くなっています。こうした取り組みの成果もあって、「ベスト・エコノミークラス・エアラインシート」賞を3回受賞するまでに高い評価もいただいております。

 

ソフト面も充実させています。例えば、客室でお過ごしいただくにあたってのインフライトエンターテイメント、すなわち映画やビデオ放送を、英語はもちろん、東南アジアの様々な言語のコンテンツを用意するなど充実させてきました。国内線では他社に先駆けて機内Wi-Fiの無料利用も開始しました。

 

機内食も劇的に変化しています。美味しくて、しかも一流感を感じて頂けるものを提供するために、スターシェフ・メニューを日本発便に導入したり、コーポレートシェフを採用して、海外発便でも彼らが監修・指導したメニューを提供する体制にしました。

 

また、海外のビジネス層のお客様にアピールしていくために、ラウンジをどのようにすべきかという課題もありました。羽田や成田のフラッグシップラウンジは大幅なリニューアルを行い、海外地区でも自営ラウンジの大規模な改修を行っております。シンガポールのように共用ラウンジへ委託をする場合でも、常に品質を比較・強化し、施設も食事も充実させてきました。

 

日本のお客様だけでなく、海外のお客様に対するマーケティングも強化し、すべてのお客様にご満足いただくために何をするべきかということを突き詰めて、サービスの強化を図ってきましたが、こうした努力の積み重ねが漸く認められたと思っています。

 

今後の抱負をお聞かせください。

我々は日本の航空会社ですから、海外における日本人社会との絆を大切に思う気持ちに変わりはありませんが、訪日需要の高まりとともに、グローバル化が進むなかで、海外のお客様に、いかに日本航空のサービスの良さを知っていただき、JAL便をご利用いただくかが今後の大きなカギになってきています。

 

シンガポールでは、肌感覚で言えば非常に高い評価をいただいていますが、まだまだビジネス層の取り込みなどに課題はあり、5スター獲得をよい契機として、更に多くの方々に日本航空のサービスの良さをご理解いただけるよう努めていきたいと思っています。

 

伸びゆくアジア諸国、活動される人々と一緒に、アジア・オセアニア地区を盛り上げていきたいと思っています。

 

 

畠山 隆久 氏

 

1965年1月生まれ。佐賀県出身。早稲田大学卒業。1988年4月日本航空入社。成田空港支店、名古屋支店、ニューヨーク支店、東京支店を経て、2009年7月欧州・中東地区支配人室旅客・国際グループ長。11年4月商品サービス戦略部長、18年4月より現職。

 

 

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.337(2018年9月1日発行)」に掲載されたものです(取材・写真 : 竹沢 総司)

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